冠動脈の血流と血行再建

冠動脈の狭窄を、造影で見た細さではなく血流で評価する指標と、その指標で治療を決めたときの臨床成績。計算で求める FFR と、壁面せん断応力によるプラークの予測も含みます。

冠動脈の狭窄を治療するかどうかは、長く冠動脈造影で見た内腔の細さで決められてきました。ところが造影は3次元の内腔を2次元の影絵として写すため、狭窄が心筋虚血を起こしているかどうかを正確には示しません。この食い違いを埋めるために、狭窄の前後の圧力から血流の低下を推定する冠血流予備量比(FFR: fractional flow reserve)が導入されました。

血流の指標で治療を決めると、何が変わったのか

FFR で治療する病変を選ぶ方針は、多枝病変でステントの本数を減らしながら心事故を減らしました。一方で、虚血のある安定冠動脈疾患で侵襲的な治療を先行させても、死亡や心筋梗塞は減らないことも大規模試験で示されています。血流の指標は「どの病変を治療するか」を選ぶ道具としては確立していますが、「治療すれば予後が良くなる」ことまでを保証するものではありません。

計算で求める指標

冠動脈 CT や造影画像から数値流体解析で FFR を推定する方法(CT-FFR、QFR)は、侵襲的な FFR と比べた診断精度が検証されています。計算の前提となる境界条件、特に微小循環の抵抗をどう与えるかが結果を左右します。

狭窄の外側にある血流の作用

壁面せん断応力(WSS)は、狭窄による圧力の低下とは別に、内皮を通じてプラークの進展と破裂に関わります。低い WSS はプラークの進展と、高い WSS はプラークの不安定化と関連づけられており、将来の心筋梗塞の予測に加える試みが進んでいます。

このトピックの文献(33 件)

The New England Journal of Medicine 2022 解析実務に直答 技術動向

3枝病変、FFR ガイド PCI はバイパスに非劣性示せず 1年の心事故10.6% 対 6.9%

3枝病変で FFR ガイド PCI は冠動脈バイパスに並べるか — FAME 3 試験

1500例で1年の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建は FFR ガイド PCI 群10.6%、冠動脈バイパス群6.9%(ハザード比1.5)で、PCI の非劣性は示されませんでした。死亡・心筋梗塞・脳卒中は7.3% と5.2%で有意差はなく、大出血・不整脈・急性腎障害はバイパス群で多くみられました。

EuroIntervention 2021 解析実務に直答 技術動向

造影を受ける狭心症患者の最大70%に閉塞性病変なし 微小循環障害と攣縮は予後良好と限らず

閉塞性冠動脈疾患の無い心筋虚血(INOCA)の定義・診断・管理 — EAPCI 専門家合意文書

INOCA は微小循環障害(微小血管狭心症)と心外膜冠動脈の攣縮(攣縮性狭心症)を主な機序とし、予後は良好とは限りません。カテ室では圧と温度センサー付きワイヤーで CFR(熱希釈で2.0未満が異常)と IMR(25以上が異常)、FFR を測り、アセチルコリン負荷で攣縮と内皮機能を評価します。微小循環を生体内で直接写す方法は現時点でありません。

The New England Journal of Medicine 2020 解析実務に直答 技術動向

中等度以上の虚血でも侵襲的治療の先行で死亡減らず 5年の複合転帰16.4% 対 18.2%

中等度以上の虚血がある安定冠動脈疾患で、侵襲的治療を先行させるべきか — ISCHEMIA 試験

37か国5179例を追跡期間中央値3.2年で比べ、侵襲的治療の先行は虚血性心血管事象も全死亡も減らしませんでした。複合転帰は6か月で侵襲群5.3%・保存群3.4%、5年で16.4%・18.2%と交差し、死亡は145例と144例でした。結果は心筋梗塞の定義によって変わりました。

JACC: Cardiovascular Imaging 2019 解析実務に直答 技術動向

急性冠症候群の前の CT、狭窄・プラーク性状に血流指標を加えると責任病変の識別が向上 最有力は病変前後の FFR 差

急性冠症候群の前に撮られた冠動脈 CT の血流指標で、責任病変を見分けられるか — EMERALD 研究

急性冠症候群の1か月〜2年前に CT を撮っていた72例の216病変で、責任病変は非責任病変より CT-FFR が低く、病変前後の CT-FFR の差(ΔFFRCT)、WSS、軸方向のプラーク応力が高い値でした。狭窄度・病変長・プラーク性状のモデルに血流指標を加えると識別能が上がり(c 指数0.747→0.789)、単独で最も情報量が多かったのは ΔFFRCT でした。

European Heart Journal 2019 解析実務に直答 技術動向

冠動脈 WSS の計算手順を29名が推奨 入口は冠動脈口から、格子は収束3%以内、MRI は形状に不適

ヒト冠動脈の壁面せん断応力の評価に関する専門家推奨 — 再構成・境界条件・格子・臨床応用

冠動脈口から関心領域までを再構成し、関心領域の直前の分岐を含めます。格子は細分化で WSS の変化が3%以内になるまで収束を確かめ、血液は剪断減粘性の模型で扱うよう推奨しています。プラークの進展を調べるなら IVUS と造影または CT の融合、被膜の微細構造やステントなら OCT の融合を勧め、MRI は冠動脈の形状に精度が足りないとしています。

EuroIntervention 2019 解析実務に直答 研究の着想

FFR でバイパスの吻合を3か所→2か所に削減 1年のグラフト開存は80% と81%で同等

冠動脈バイパスの吻合先を FFR で決めるとグラフト開存は変わるか — GRAFFITI 試験

172例を造影ガイドと FFR ガイドのバイパスに割り付け、FFR ガイド群は吻合数が減り(中央値3か所→2か所)、オフポンプ手術と低侵襲手術が増えました。1年のグラフト開存は80% と81%で差がなく、死亡・心筋梗塞・標的血管再血行再建・脳卒中にも差はありませんでした。

European Heart Journal 2018 解析実務に直答

CT-FFR で治療方針の67%が変更 0.80 超の1592例は90日で死亡・心筋梗塞ゼロ

実臨床で CT-FFR は治療方針をどれだけ変えたか — ADVANCE 登録研究

欧州・北米・日本の38施設5083例で、CT-FFR を加えると中核検査室の判定で治療方針の66.9%が変わりました。侵襲的造影で有意狭窄がなかった割合は CT-FFR 0.80 以下で14.4%、0.80 超で43.8%でした。CT-FFR 0.80 超の1592例では90日以内の死亡・心筋梗塞はなく、心事故19例はすべて0.80 以下で起き、18例は0.76 未満でした。

Journal of the American College of Cardiology 2018 解析実務に直答 技術動向

造影で狭窄なしの狭心症、冠血流予備能・微小循環抵抗の測定で89%に原因 症状スコア11.7点改善

狭窄の無い狭心症で冠動脈機能を測ると治療は良くなるか — CorMicA 試験

造影で閉塞性病変の無い151例を無作為に割り付け、冠動脈機能検査の結果を主治医に伝えた群では、6か月の狭心症の総合スコアが11.7点改善しました。検査では微小血管狭心症51.7%、攣縮性狭心症16.6%、両者の合併20.5%が見つかり、異常が無かったのは11.3%でした。結果を伝えない群では35.5%が見逃されていました。

The New England Journal of Medicine 2018 解析実務に直答 技術動向

FFR 陽性狭窄の PCI、5年でも複合転帰13.9% 対 27.0% 死亡率は5.1% と5.2%で同等

FFR で選んだ狭窄への PCI の5年成績 — FAME 2 試験の長期追跡

5年の死亡・心筋梗塞・緊急血行再建は PCI 群13.9%、薬物治療群27.0%で差が続きました。差は緊急血行再建(6.3% と21.1%)によるもので、死亡(5.1% と5.2%)と心筋梗塞(8.1% と12.0%)に有意差はありませんでした。薬物治療群の51%が5年までに PCI を受けています。

Journal of the American Heart Association 2018 解析実務に直答 技術動向

造影から計算する QFR、FFR との差は平均0.01±0.06 閾値付近0.75〜0.84では正診率71%

造影2方向から計算する QFR はカテ室で FFR の代わりになるか — FAVOR II Europe-Japan 研究

11施設317病変で、QFR の感度86.5%・特異度86.9%は、2次元の定量造影の44.2%・76.5%を上回りました。FFR との差は平均0.01±0.06、計算時間の中央値は5.0分で FFR の7.0分より短くなりました。ただし FFR 0.75〜0.84 の病変では正診率が71.3%に下がりました。

Journal of the American College of Cardiology 2018 解析実務に直答 技術動向

病変近位部の WSS が 4.71 Pa を超えると3年の心筋梗塞が増加 FFR に上乗せの予測情報

FFR 陽性の安定冠動脈疾患で、病変近位部の高い WSS は心筋梗塞を予測するか — FAME 2 の事後解析

FAME 2 の薬物治療群441例のうち3年以内に責任血管の心筋梗塞を起こした29例と、背景を揃えた対照29例を比べると、病変近位1/3の WSS が 3 Pa 上がるごとに心筋梗塞のハザードが23%増えました。最適な閾値は 4.71 Pa で、FFR の予測モデルに加えると再分類が改善しました。病変の上流・中部・遠位・下流の WSS や、低い WSS は心筋梗塞と関連しませんでした。

The New England Journal of Medicine 2017 解析実務に直答 技術動向

アデノシン不要の iFR、1年の心事故6.8%で FFR の7.0%と同等 手技中の症状は31%→3%

充血を使わない iFR は FFR の代わりになるか — DEFINE-FLAIR 試験

中間病変の2492例を iFR(閾値0.89)と FFR(閾値0.80)に割り付け、1年の死亡・心筋梗塞・予定外血行再建は6.8% と7.0%で、iFR の非劣性が示されました。手技中の症状・徴候は3.1% と30.8%、手技時間の中央値は40.5分と45.0分で、iFR のほうが少なく短くなりました。

The New England Journal of Medicine 2017 解析実務に直答 技術動向

iFR と FFR、虚血と判定する病変は29.1% 対 36.8% それでも1年の心事故は同等

安定狭心症と急性冠症候群で iFR と FFR のどちらで治療を決めるか — iFR-SWEDEHEART 試験

2037例の登録研究基盤の無作為化試験で、1年の死亡・心筋梗塞・予定外血行再建は iFR 群6.7%、FFR 群6.1%で、iFR の非劣性が示されました。虚血と判定された病変は iFR 群29.1%、FFR 群36.8%で、指標によって分類が異なっても転帰に差は出ませんでした。手技中の胸部不快感は3.0% と68.3%でした。

Heart and Vessels 2017 研究の着想

末梢側吻合を4 mm→10 mm に延長、吻合部のエネルギー損失77→35 μW 吻合角も半減

冠動脈バイパスの末梢側吻合を長くするとエネルギー損失は減るか — 手縫い吻合模型の CFD

訓練用模型に外科医が手縫いした吻合を micro-CT で撮像して CFD で解くと、10 mm の吻合は4 mm より吻合部の断面積が大きく(28.67 と 8.89 mm²)、吻合角が小さく(10.2° と 20.6°)、エネルギー損失は 34.78 μW と 77.10 μW で半分以下でした。4 mm の吻合では流れの向きが2回急に変わり、つま先側で剥離が起きました。

Heart and Vessels 2016 研究の着想 技術動向

静脈グラフトの中枢吻合、上行大動脈に直角で最短経路なら OSI 0.46→0.04

冠動脈バイパスの中枢側吻合の向きがグラフト内の血流に与える影響 — 理想化模型による CFD

理想化模型で比べると、大動脈の長軸に直角で最短経路をとる吻合は、長軸に平行で心尖部へ向ける吻合より、グラフトが3.6 cm 短く血流が5%多くなりました。平行な吻合では収縮早期に吻合部で流れの剥離が起き、最小 WSS 0.53 Pa・OSI 0.46 でしたが、直角な吻合では剥離がなく 4.09 Pa・0.04 でした。

European Heart Journal 2015 解析実務に直答

CT-FFR で心臓カテーテル検査の61%を中止 狭窄なしの検査73%→12%

CT-FFR を検査の流れに組み込むと、不要な心臓カテーテル検査は減るか — PLATFORM 研究

欧州11施設584例で、カテーテル検査を予定していた群では、検査で有意な狭窄が見つからなかった割合が通常診療73.3%、CT-FFR 群12.4%でした。CT-FFR の結果を見てカテーテル検査の61%が中止され、中止した患者に90日以内の事象はありませんでした。非侵襲検査を予定していた群では差がありませんでした。

Interactive Cardiovascular and Thoracic Surgery 2014 研究の着想 技術動向

対角枝の狭窄が軽いと独立した静脈グラフトで逆流 重いと Y 字グラフトで左前下行枝の血流低下

多枝病変の左前下行枝・対角枝領域に最適なバイパスグラフトの配置 — 理想化模型による CFD

理想化した左冠動脈の模型で3種類の配置を比べると、対角枝の狭窄が軽いとき、独立した静脈グラフトでは収縮期に対角枝から左前下行枝への逆流が生じ、内胸動脈グラフトの血流が減りました。対角枝の狭窄が重いとき、Y 字の複合動脈グラフトは血流が対角枝に分かれ、左前下行枝の血流が他の配置より約10%低くなりました。

Journal of the American College of Cardiology 2014 解析実務に直答 技術動向

CT-FFR の患者単位特異度79%、CT 狭窄度は34% ただし13%は画質不良で解析対象外

改良した CT-FFR の診断成績と、撮像品質の影響 — NXT 試験

10施設254例484血管で、患者単位の感度・特異度は CT-FFR 86%・79%、CT の50%超狭窄94%・34%、侵襲的造影の50%超狭窄64%・83%でした。曲線下面積は CT-FFR 0.90、CT 0.81 でした。先行試験より特異度が上がった理由として、微小循環抵抗の模型の改良と撮像ガイドラインの厳守が挙げられています。

Journal of the American College of Cardiology 2013 解析実務に直答 技術動向

CT の形状だけで FFR を計算する仕組み 心筋量で総流量、血管径で末梢抵抗、充血は抵抗0.24倍

冠動脈 CT に数値流体解析を当てて FFR を求める原理 — FFRCT の科学的基盤

CT から内腔の形状を抽出し、心臓・体循環・冠微小循環を集中定数模型で境界条件にして流れを解きます。安静時の総冠血流は心筋量から、各出口の抵抗は血管径から決め、最大充血は総抵抗を安静時の0.24倍に下げて表します。微小循環障害があると血管拡張を過大に見込み、計算値が実測 FFR より低く出ます。

The New England Journal of Medicine 2012 解析実務に直答 技術動向

FFR 0.80 以下の狭窄、薬物治療だけでは緊急血行再建11.1% PCI 併用で1.6%

安定冠動脈疾患で FFR 陽性の狭窄に PCI を加えるか、薬物治療だけにするか — FAME 2 試験

FFR 0.80 以下の狭窄がある888例で、PCI を加えた群の死亡・心筋梗塞・緊急血行再建は4.3%、薬物治療だけの群は12.7%で、試験は早期に中止されました。差は緊急血行再建(1.6% と11.1%)によるもので、死亡と心筋梗塞には有意差がありませんでした。全狭窄が FFR 0.80 超だった群は薬物治療だけで3.0%でした。

Circulation 2012 解析実務に直答 技術動向

大きなプラークに低い内皮せん断応力が重なると1年で41%に PCI どちらも無ければ92%が進行せず

内皮せん断応力とプラーク量で冠動脈病変の進行を予測できるか — 日本の506例による PREDICTION 研究

日本の17施設506例の3枝を IVUS と造影で再構成して ESS を求め、374例を6〜10か月後に再評価しました。内腔面積の減少は大きなプラーク量と低い ESS がそれぞれ独立に予測しました。両者を併せ持つ狭窄が1年以内に PCI を要した割合は41%、どちらも無ければ92%が進行しませんでした。ただし両者を併せ持つ患者は6%で、症状のある臨床事象は少なく統計的に扱えませんでした。

Journal of the American College of Cardiology 2011 解析実務に直答 技術動向

CT から計算した FFR、血管単位の正診率84.3% CT の狭窄度だけでは58.5%

冠動脈 CT から計算した FFR で虚血を起こす狭窄を診断できるか — DISCOVER-FLOW 試験

4施設103例159血管で、血管単位の正診率は FFRCT 84.3%、CT の50%以上狭窄58.5%でした。特異度が82.2% と39.6%で大きく違い、FFRCT は狭窄度だけによる偽陽性を減らしました。FFRCT と FFR の相関係数は0.717で、FFRCT は平均0.022低く出ました。

Circulation 2011 技術動向 研究の着想

低 WSS の部位はプラーク増大、高 WSS の部位は壊死性コアと石灰化が増え線維成分が減少

冠動脈の WSS はプラークの進展と組成の変化に関わるか — 低 WSS と高 WSS の6か月の追跡

20例の左前下行枝で、WSS を低(1.0 Pa 未満)・中(1.0〜2.5 Pa)・高(2.5 Pa 超)に分けて6か月追跡すると、低 WSS の区間はプラーク面積と壊死性コアが増え、血管が内向きに縮む傾向でした。高 WSS の区間はプラーク面積は増えず、壊死性コアと高密度石灰が増え、線維・線維脂肪成分が減り、血管が外向きに過剰に広がる傾向でした。破綻しやすい組成への変化を示唆する結果です。

Journal of the American College of Cardiology 2010 解析実務に直答 技術動向

造影の狭窄度は虚血を示さず FFR 0.80 超の病変を見送ると心臓死・梗塞は年1%

カテーテル検査室における冠動脈生理評価の現在 — FFR・CFR・微小循環抵抗の総説

造影は3次元の内腔を2次元で写すため、径狭窄率30〜80%の病変では虚血の有無を正確に示しません。最大充血下で狭窄の遠位圧を大動脈圧で割った FFR が、血管ごとの虚血の指標になります。FFR 0.75 未満は虚血、0.80 超は非虚血と対応し、その間は臨床判断が要る移行帯です。

Annals of Biomedical Engineering 2010 技術動向 研究の着想

左冠動脈は拡張期、右冠動脈は収縮期に多く流れる 心筋内圧を境界条件に入れて初めて再現

冠動脈の血流と圧力を患者固有に計算する境界条件 — 心筋内圧を含む集中定数模型の結合

各冠動脈出口に、動脈抵抗・微小循環抵抗・静脈抵抗・コンプライアンスと心筋内圧からなる集中定数模型をつなぎ、心筋内圧を左右の心室圧で与えると、左冠動脈は拡張期優位、右冠動脈は収縮期優位という実際の波形が再現されました。最大拡張を想定した条件では、径狭窄75%で左前下行枝の流量が 3.7 から 1.8 mL/秒に減りました。

Atherosclerosis 2010 技術動向

右冠動脈の計算で側枝を省くと WSS の中央値が 2.54 Pa→4.37 Pa に過大評価 局所差は最大 12 Pa

冠動脈の流れの計算で側枝を省くと WSS はどれだけ変わるか — 右冠動脈17例の比較

右冠動脈17例を側枝ありと側枝なしで解き比べると、側枝なしでは主幹の流量が側枝の分だけ減らないため、WSS の中央値が 2.54 Pa から 4.37 Pa に上がり、同じ点の差は最大 12.0 Pa に達しました。差は分岐部だけでなく狭窄部と強い湾曲部にも及びました。一方、定常計算と拍動計算の時間平均 WSS の差は平均7%未満で、分布の相関は0.97を超えました。

The New England Journal of Medicine 2009 解析実務に直答 技術動向

多枝病変の PCI を FFR で選別、ステント2.7本→1.9本 1年の心事故18.3%→13.2%

多枝病変の PCI を FFR で決めるか造影で決めるか — FAME 試験

FFR 0.80 以下の病変だけにステントを置く方針は、造影で選んだ病変を全部治療する方針より、ステントの本数と造影剤を減らし、1年の死亡・心筋梗塞・再血行再建の複合を18.3%から13.2%に減らしました。造影で選んだ病変の37%は FFR が 0.80 を超えていました。

Journal of the American College of Cardiology 2008 技術動向 研究の着想

破裂したプラーク20例、局所的に高い壁面せん断応力の位置と破裂部位が一致(κ=0.79)

冠動脈プラークの破裂部位と局所的に高い壁面せん断応力の一致 — 3次元 IVUS と CFD による解析

急性冠症候群で明瞭な潰瘍のある20病変を3次元 IVUS で再構成し、破裂前の形を外挿して CFD で解くと、すべての破裂がプラークの近位側か頂部にあり、局所的に高い壁面せん断応力の位置と破裂の位置がよく一致しました(κ=0.79)。圧力の局所的な上昇は2病変だけでした。

Journal of the American College of Cardiology 2007 解析実務に直答 技術動向

低い内皮せん断応力と過剰な外向きリモデリングの悪循環 破裂しやすいプラークの成り立ち

冠動脈硬化の自然歴と血管リモデリングにおける内皮せん断応力の役割 — 分子・細胞・血管の総説

分岐部や湾曲の内側など、時間平均の内皮せん断応力(ESS)が低い部位で内皮が動脈硬化を起こしやすい性質に変わり、初期プラークができます。その後、血管が外向きに広がって ESS が正常に戻れば安定したプラークに、過剰に広がって低い ESS が続けば、炎症と基質の分解が進んで破裂しやすい薄い線維性被膜のプラークに育つという枠組みです。

European Journal of Cardio-Thoracic Surgery 2007 解析実務に直答 研究の着想

自己冠動脈の狭窄51〜75%に吻合したグラフトの順行流は86.0% 91〜100%なら98.8%

全動脈グラフトのオフポンプ冠動脈バイパスで順行性血流を得るグラフト設計 — 1571本の術後造影

395例1571本のグラフトの術後2週造影で、開存率は98.6%でも順行性の血流は91.3%でした。両側内胸動脈の使用と、中等度狭窄の枝をグラフトの末端に置かない I 字複合グラフトの向きの選択で、機能するグラフトの割合が92.4%から95.8%に上がりました。自己冠動脈の狭窄が軽いほど順行流の割合は下がりました。

Annals of Biomedical Engineering 2003 研究の着想

ステントのストラット周囲に低 WSS の淀み、最大充血時の最小 WSS は留置で77%低下

ステント留置で冠動脈の壁面せん断応力はどう変わるか — スロット管ステントの3次元 CFD

イヌの左前下行枝の実測流速と内径から、スロット管ステント(16 mm、ストラット突出 0.1 mm)を入れた3次元模型を作って定常流で解くと、ストラットの前後に低 WSS の淀みができ、ステントの出口側で低 WSS の範囲が広がりました。アデノシンで血流を増やした条件では、最小 WSS がステントのない血管より出口で77%、ステント内で66〜82%低くなりました。

Circulation 2003 技術動向 研究の着想

ヒト冠動脈で初の連続観察、低い内皮せん断応力の部位でプラークが厚くなり血管が外向きに拡大

ヒト冠動脈で内皮せん断応力から6か月後のプラーク進展を予測できるか — IVUS と CFD の連続観察

8例12本の冠動脈を IVUS と造影で3次元に再構成して CFD で ESS を求め、6か月後に同じ部位を再評価しました。自己冠動脈では ESS が低い領域でプラークが厚くなり、血管が外向きに広がって内腔は保たれました。生理的な ESS の領域はほぼ変化がなく、高い ESS の領域は外向きに広がって ESS が正常化しました。ステント内は ESS によらず内膜が厚くなりました。

The New England Journal of Medicine 1996 解析実務に直答 技術動向

中等度狭窄45例、FFR 0.75 未満は全例で虚血を確認 正診率93%、0.75 以上は14か月無事故

冠血流予備量比(FFR)で中等度狭窄の機能的重症度を評価する — FFR の臨床検証

中等度狭窄の45例で、FFR 0.75 未満の21例は全員が少なくとも1つの負荷試験で可逆性虚血を示し、血行再建後に陰性化しました。0.75 以上の24例のうち21例は全負荷試験が陰性で、血行再建をせずに14か月間事象はありませんでした。感度88%・特異度100%・正診率93%で、造影の狭窄度は両群で差がありませんでした。

最終更新 2026-10-02