原著 The New England Journal of Medicine 1996 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

冠血流予備量比(FFR)で中等度狭窄の機能的重症度を評価する — FFR の臨床検証

Measurement of fractional flow reserve to assess the functional severity of coronary-artery stenoses

Pijls NH, De Bruyne B, Peels K, Van Der Voort PH, Bonnier HJ, Bartunek J, Koolen JJ.

問い

造影で中等度の冠動脈狭窄があり、胸痛との関係がはっきりしないとき、狭窄の前後の圧の比で虚血の有無を判断できるのか。

答え

中等度狭窄の45例で、FFR 0.75 未満の21例は全員が少なくとも1つの負荷試験で可逆性虚血を示し、血行再建後に陰性化しました。0.75 以上の24例のうち21例は全負荷試験が陰性で、血行再建をせずに14か月間事象はありませんでした。感度88%・特異度100%・正診率93%で、造影の狭窄度は両群で差がありませんでした。

当社の視点

FFR を臨床で使える指標として確立した原典です。最大充血下では狭窄遠位の圧と大動脈圧の比が、狭窄がある場合の最大血流と狭窄がない場合の理論上の最大血流の比に等しいという定義に立ち、全身の血圧や心拍数、安静時の血流を変える条件に影響されにくく、正常値が誰でも1になるという性質を挙げています。一方で、小血管病変・びまん性病変・左室肥大では薬による充血で血流が十分に増えず、狭窄の重症度を過小評価すると著者自身が書いています。計算で FFR を推定する解析も同じ前提に立つため、この限界はそのまま計算にも当てはまります。

扱う範囲

  • 01

    対象

    主要冠動脈の近位部に目視約50%の狭窄があり、胸痛が虚血によるか不確かで、左室機能が正常な連続45例です。薬は7日間中止しました。

  • 02

    負荷試験と FFR

    自転車運動負荷心電図、タリウム心筋シンチグラフィ、ドブタミン負荷心エコー、定量造影を48時間以内に行いました。FFR はアデノシン 140 μg/kg/分の静注で最大充血を起こし、圧センサー付きワイヤーの遠位圧とカテーテルの大動脈圧の平均値の比で求めました。

  • 03

    参照基準の作り方

    単一の基準がないため、少なくとも1つの負荷試験が明瞭に陽性で、血行再建後に陰性化した場合を虚血あり、全負荷試験が陰性の場合を虚血なしとする複合基準を作りました。

  • 04

    治療と経過

    FFR 0.75 未満の20例に血行再建(形成術13例、バイパス7例)を行い、形成術後の FFR は平均0.87に上がりました。0.75 以上の24例は薬物治療だけで、狭心症の重症度分類は2.8から1.3に改善しました。

  • 05

    FFR の限界

    小血管病変、びまん性病変、左室肥大では充血時の血流増加が制限され、狭窄の重症度を過小評価します。運動で誘発される攣縮がある患者では、薬による充血と運動時の充血が同じにならないとしています。

Pijls 1996 の主な結果

項目値補足
対象 45例 中等度狭窄、胸痛の原因が不確か
FFR の判定閾値 0.75 先行研究から設定
感度・特異度 88%・100% 複合負荷試験を基準
正診率 93% 陽性的中率100%・陰性的中率88%
形成術後の FFR 平均0.87(0.77〜0.96) 術後15分
FFR 0.75 以上の追跡 14か月で事象0 24例、血行再建なし

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • FFR を計算で推定するときは、小血管病変・びまん性病変・左室肥大で充血時の血流増加が制限される患者を、結果の解釈で区別します。
  • FFR の定義が「最大充血で抵抗が最小かつ一定」を前提にしていることを、計算の境界条件の説明に含めます。
  • 原典の閾値は0.75で、のちの FAME 試験は0.80を採用したことを区別して引用します。

この研究が扱わない範囲

  • 45例の単施設研究で、転帰を比べる無作為化試験ではありません。
  • 参照基準は複数の負荷試験の組み合わせで、単一の基準ではありません。
  • 多枝病変や急性冠症候群は対象外です。

書誌情報

原題Measurement of fractional flow reserve to assess the functional severity of coronary-artery stenoses
著者Pijls NH, De Bruyne B, Peels K, Van Der Voort PH, Bonnier HJ, Bartunek J, Koolen JJ.
掲載誌The New England Journal of Medicine(1996)
DOI10.1056/NEJM199606273342604
PMID8637515

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