原著 The New England Journal of Medicine 2009 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

多枝病変の PCI を FFR で決めるか造影で決めるか — FAME 試験

Fractional flow reserve versus angiography for guiding percutaneous coronary intervention

Tonino PA, De Bruyne B, Pijls NH, Siebert U, Ikeno F, van' t Veer M, Klauss V, Manoharan G, Engstrøm T, Oldroyd KG, Ver Lee PN, MacCarthy PA, Fearon WF, FAME Study Investigators.

問い

多枝病変の PCI で、造影で狭窄と判断した病変を全部治療するべきか。FFR で選ぶべきか。

答え

FFR 0.80 以下の病変だけにステントを置く方針は、造影で選んだ病変を全部治療する方針より、ステントの本数と造影剤を減らし、1年の死亡・心筋梗塞・再血行再建の複合を18.3%から13.2%に減らしました。造影で選んだ病変の37%は FFR が 0.80 を超えていました。

当社の視点

造影で「50%以上の狭窄で治療が必要」と術者が判断した病変のうち、37%は圧で測ると虚血を起こしていなかった、という数値が要点です。形態の評価と血流の評価が、同じ病変について別の答えを出すことを、無作為化試験の規模で示しています。血流解析の顧客に「形が狭いことと流れが妨げられていることは別」と説明するときの、最も引用される根拠です。改善の機序は、虚血を起こさない病変へのステント留置を避けて、ステント血栓症や再狭窄のリスクを減らしたことと推測されています。

扱う範囲

  • 01

    試験の設計

    米国と欧州の20施設で、多枝病変の1005例を無作為に割り付けました。割り付け前に、術者が造影所見から治療すべき病変(径狭窄50%以上)を指定し、造影群は指定病変を全部、FFR 群は FFR 0.80 以下の病変だけをステント治療しました。

  • 02

    FFR の測定条件

    アデノシン 140 μg/kg/分の中心静脈投与で最大充血を起こし、遠位冠動脈圧と大動脈圧の平均値の比を求めました。直列病変やびまん性病変では充血下の引き抜き圧曲線を記録し、完全閉塞は FFR 0.50 とみなしました。

  • 03

    FFR で見た指定病変

    FFR は全病変の94.0%で測定でき、63.0%が 0.80 以下、37.0%が 0.80 超でした。中間病変だけを対象にした先行研究では虚血を示すのは約35%で、FAME は造影で有意と判断された病変全般を対象にしていました。

  • 04

    1年の転帰

    主要評価項目は造影群18.3%、FFR 群13.2%(P=0.02)でした。死亡または心筋梗塞は11.1% と7.3%(P=0.04)でした。狭心症が消失した割合は77.9% と81.3% で有意差はありませんでした。

  • 05

    手技と費用

    手技時間は同等(70分と71分)で、造影剤は 302 mL と 272 mL、材料費は 6007 ドルと 5332 ドル、入院日数は3.7日と3.4日でした。

FAME の主な結果

造影群と FFR 群の1年の転帰。FFR 群はステントを減らして事故も減らした
数値で確かめる
項目値補足
対象 1005例(20施設) 造影群496例・FFR 群509例
1例あたりのステント本数 2.7本 → 1.9本 造影群 → FFR 群、P<0.001
FFR 0.80 超だった指定病変 37.0% 513病変。ステントを置かなかった
1年の死亡・心筋梗塞・再血行再建 18.3% → 13.2% P=0.02。20例に FFR を測ると1件の事故を防ぐ計算
1年の死亡または心筋梗塞 11.1% → 7.3% P=0.04(事前規定の副次項目ではない)
狭心症の消失 77.9% と 81.3% P=0.20

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • 形態から狭窄の重症度を語るときは、造影で有意とされた病変の37%が FFR では非虚血だった事実を併記します。
  • FFR の閾値を引用するときは、0.75〜0.80 の移行帯の上限 0.80 を採用した試験であることを書き添えます。
  • 改善の機序は推測であり、試験が直接示したのは転帰の差であることを区別して書きます。

この試験が扱わない範囲

  • 有意な左主幹部病変、冠動脈バイパス術後、5日以内の ST 上昇型心筋梗塞、高度な屈曲・石灰化は除外されています。
  • 追跡は1年です。長期成績は別に報告されています。
  • FFR で治療しない場合(薬物治療だけ)との比較ではありません。こちらは FAME 2 が扱いました。

書誌情報

原題Fractional flow reserve versus angiography for guiding percutaneous coronary intervention
著者Tonino PA, De Bruyne B, Pijls NH, Siebert U, Ikeno F, van' t Veer M, Klauss V, Manoharan G, Engstrøm T, Oldroyd KG, Ver Lee PN, MacCarthy PA, Fearon WF, FAME Study Investigators.
掲載誌The New England Journal of Medicine(2009)
DOI10.1056/NEJMoa0807611
PMID19144937

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