カテーテル検査室における冠動脈生理評価の現在 — FFR・CFR・微小循環抵抗の総説
Current concepts of integrated coronary physiology in the catheterization laboratory
冠動脈造影で狭窄が見えたとき、その狭窄が虚血を起こしているかを何で判断するのか。
造影は3次元の内腔を2次元で写すため、径狭窄率30〜80%の病変では虚血の有無を正確に示しません。最大充血下で狭窄の遠位圧を大動脈圧で割った FFR が、血管ごとの虚血の指標になります。FFR 0.75 未満は虚血、0.80 超は非虚血と対応し、その間は臨床判断が要る移行帯です。
当社の視点
FFR の定義が「圧力の比で流量の比を代用する」ことに立っている点を、計算の側から読める総説です。代用が成り立つのは最大充血で微小循環の抵抗が最小かつ一定になるという前提があるときで、急性心筋梗塞の責任血管ではその前提が崩れると明記されています。CT や造影画像から FFR を計算する手法も、同じ前提を境界条件として模型に持ち込んでいます。狭窄部の圧力低下を、長さ・面積・流量と粘性摩擦・剥離の係数から計算する式が図に示されており、血流解析で扱う圧力損失と臨床指標が同じ物理でつながることを説明するときに使えます。
扱う範囲
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01
造影が虚血を示さない理由
造影は内腔の影絵で、偏心した病変は撮影方向によって狭窄度が変わります。びまん性病変では基準となる正常部が決められません。長い中等度狭窄が、短く高度な狭窄と同等以上に血行動態上の影響を持つことがあります。
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02
FFR の定義と前提
FFR は狭窄のある血管の最大血流を、狭窄が無い場合の最大血流で割った比です。最大充血で抵抗が最小かつ一定とみなせるとき、流量は圧力に比例するので、遠位圧 Pd と大動脈圧 Pa の比で代用できます。正常値はどの血管・どの患者でも1です。
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03
CFR・微小循環抵抗との違い
冠血流予備能(CFR)は充血時と安静時の血流の比で、正常値が一定でなく微小循環の影響を受けます。FFR は心外膜の狭窄に特異的な指標とされます。圧と流速を同時に測ると、狭窄抵抗と微小循環抵抗(IMR)を分けて評価できます。
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04
FFR で見送った病変の予後
DEFER 試験では FFR 0.75 以上の病変で PCI を見送った群と実施した群で5年の無事故生存に差がなく(80% と 73%)、FFR が正常な病変の心臓死・心筋梗塞は年1%で、ステント留置で減りませんでした。
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05
冠動脈バイパスのグラフト閉塞
術前 FFR が 0.80 を超える血管に吻合した静脈グラフトは、1年で20〜25%が閉塞していました。血流が抵抗の低い自己冠動脈の側に流れ、グラフトの血流が遅くなる競合血流が原因と推測されています。
FFR の閾値と検証値
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 虚血と対応する FFR | < 0.75 | 感度88%・特異度100%・全体の正診率93% |
| 非虚血と対応する FFR | > 0.80 | 予測精度95% |
| 移行帯 | 0.75〜0.80 | 臨床判断が要る範囲 |
| QCA の対 FFR 感度・特異度 | 78%・51% | 18研究1522病変のメタ解析(FFR 0.75 基準) |
| CFR の異常値 | < 2.0 | 可逆性の灌流欠損と高い感度・特異度で対応 |
| DEFER 5年の心臓死・心筋梗塞 | 見送り群3.3%・実施群7.9%・基準群15.7% | 基準群は FFR 0.75 未満で PCI を実施した群 |
| FFR 0.80 超に吻合した静脈グラフトの1年閉塞率 | 20〜25% | 450本の CABG(Botman らの報告) |
いずれもこの総説が引用した値です。
実務チェック
- FFR を計算で推定する解析では、最大充血で微小循環抵抗が最小かつ一定という前提を、どの境界条件で表したかを記録します。
- 急性心筋梗塞の責任血管では、微小循環の抵抗が一定でないため FFR の前提が崩れることを、結果の解釈に書き添えます。
- 直列病変やびまん性病変では、1点の FFR ではなく引き抜き圧曲線で圧力低下の位置を確かめます。
- 冠動脈バイパスの解析では、自己冠動脈の狭窄が軽い場合にグラフトとの競合血流が生じることを前提に置きます。
この総説が扱わない範囲
- 2010年時点の総説で、充血を使わない指標(iFR)や、CT・造影から計算する FFR は扱っていません。
- FFR で治療を決めた場合と薬物治療だけの場合を比べた無作為化試験(FAME 2)より前の総説です。
- 著者2名は圧ワイヤーの製造企業から講演料・研究費を受けています。
書誌情報
| 原題 | Current concepts of integrated coronary physiology in the catheterization laboratory |
|---|---|
| 著者 | Kern MJ, Samady H. |
| 掲載誌 | Journal of the American College of Cardiology(2010) |
| DOI | 10.1016/j.jacc.2009.06.062 |
| PMID | 20117397 |