7-8 冠動脈の狭窄は、血流で測って治療を決められるのか
3枝病変で、FFR で病変を選んだ PCI は冠動脈バイパスに並ぶのか
3枝病変では、FFR で病変を選んだ PCI も1年の心事故で冠動脈バイパスに非劣性を示せませんでした。バイパスの吻合先を FFR で選ぶと吻合は減りましたが、グラフトの開存は変わらず、外科側の血流評価はまだ定まっていません。
多枝病変の血行再建には、PCI と冠動脈バイパスの二つの選択肢があります。FAME 試験1は、多枝病変の PCI で FFR を使うとステントが減り心事故も減ることを示しました。それなら、FFR で病変を選んだ PCI は、バイパスと同等の成績になるのでしょうか。
FFR ガイド PCI と冠動脈バイパスを比べた FAME 3
FAME 3 試験2は、左主幹部を含まない3枝病変の1500例を、FFR ガイド PCI と冠動脈バイパスに割り付けました。PCI 群では FFR 0.80 以下の病変だけに新世代の薬剤溶出性ステントを置き、バイパス群は各施設の標準術式で、97%に左内胸動脈を使いました。
1年の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建は、PCI 群10.6%、バイパス群6.9%で、PCI の非劣性は示されませんでした。死亡・心筋梗塞・脳卒中に限ると7.3% と5.2%で有意差はなく、大出血・不整脈・急性腎障害・30日以内の再入院はバイパス群で多くみられました。
FFR が 0.80 を超えた治療予定病変は24%で、FAME の37%より少なく、FFR を測れたのも82%の病変にとどまりました。FFR ガイドの利益は不要なステントを避けることにあるため、見送る病変が少なければ利益も小さくなると著者は考察しています。
| FAME | FAME 3 | |
|---|---|---|
| 対象 | 多枝病変(PCI が適応) | 3枝病変(PCI とバイパスのどちらも可能) |
| 比較 | FFR ガイド PCI 対 造影ガイド PCI | FFR ガイド PCI 対 冠動脈バイパス |
| FFR 0.80 超の病変 | 37% | 24% |
| 1年の主要評価項目 | 13.2% 対 18.3%(FFR 群が良好) | 10.6% 対 6.9%(非劣性を示せず) |
バイパスの吻合先を FFR で選ぶ試み(GRAFFITI)
PCI で FFR が役立つなら、バイパスの吻合先の選択にも役立つはずだ、という発想から行われたのが GRAFFITI 試験3です。左前下行枝か左主幹部の有意病変に加えて中間狭窄の血管を持つ172例で、全中間狭窄の FFR を伏せたまま外科医に術式を決めさせ、その後に割り付けました。FFR 群では値を開示し、0.80 以下の血管にだけ吻合するよう術式を変更させています。
FFR 群は吻合数の中央値が3か所から2か所に減り、オフポンプ手術は14%から31%に増えました。一方、1年のグラフトの開存率は80% と81%で差がなく、臨床事象にも差はありませんでした。
この試験では、登録された病変の4分の3が FFR で有意だったため、見送る吻合が少なく検出力が足りなかったと著者は考察しています。FAME 3 でも、バイパス群で術前に FFR を測ったのは10%だけでした。外科の血行再建で FFR をどう使うかは、PCI ほど定まっていません。
自己冠動脈の FFR とグラフトの開存の関係
GRAFFITI のもう一つの結果は、グラフトが開存するかどうかが、吻合した自己冠動脈の FFR とも狭窄度とも相関しなかったことです。開存したグラフトと閉塞したグラフトで、自己冠動脈の径狭窄の中央値はどちらも70%、FFR は0.69 と0.65でした。
一方、冠動脈生理評価の総説4は、術前 FFR が 0.80 を超える血管に吻合した静脈グラフトの20〜25%が1年で閉塞していたという報告を引き、血流が抵抗の低い自己冠動脈の側に流れる競合血流が原因と推測しています。
自己冠動脈の狭窄が軽いとグラフトが閉塞しやすいという観察と、GRAFFITI で開存と FFR が相関しなかった観察は、グラフトの開存が自己冠動脈の狭窄の重症度だけでは決まらないことを示唆しています。吻合の形状やグラフトの配置が作る局所の血流を扱った研究を、7-9次の記事で取り上げます。
引用文献(4 本)
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ここで答えていない問い
- バイパスのグラフトが閉塞するかどうかは、自己冠動脈の狭窄の重症度以外の何で決まるのか。
第7章「冠動脈の狭窄は、血流で測って治療を決められるのか」より 最終更新 2026-10-02