7-7 冠動脈の狭窄は、血流で測って治療を決められるのか

CT-FFR を検査の流れに組み込むと、心臓カテーテル検査は減るのか

カテーテル検査を予定していた胸痛患者で CT-FFR を先に行うと、検査の61%が中止され、狭窄の無い検査は73%から12%に減りました。実臨床の登録では治療方針の3分の2が変わり、医師は数値の大きさで判断していました。

7-6計算で求める FFR の記事では、CT-FFR が CT の狭窄度より虚血を正しく見分けることを扱いました。次の問いは、CT-FFR を実際の検査の流れに入れたときに、医師の判断と患者の経過がどう変わるかです。

カテーテル検査の前に CT-FFR を置いた PLATFORM 研究

PLATFORM 研究1は、欧州11施設で新規の胸痛患者584例を登録しました。各施設でまず通常診療の患者を登録し、続いて CT と CT-FFR を受ける患者を登録する逐次コホートの設計で、無作為化はしていません。

カテーテル検査を予定していた群では、検査を行って有意な狭窄が見つからなかった割合が、通常診療73.3%、CT-FFR 群12.4%でした。CT-FFR 群では結果を見てカテーテル検査の61%が中止され、中止した患者に90日以内の事象はありませんでした。カテーテル検査に進んだ患者のうち、血流の情報を持っていた割合は通常診療44.4%、CT-FFR 群97.4%でした。

効果の大きさの多くは、通常診療のカテーテル検査の7割以上(施設の目視判定でも57%)が有意狭窄なしだったという、現状の非効率から来ています。非侵襲検査を予定していた群では差がありませんでした。90日の追跡で、臨床転帰の差を論じる検出力はありません。

実臨床で治療方針はどう変わったか(ADVANCE)

ADVANCE 登録研究2は、欧州・北米・日本の38施設で、CT で30%以上の狭窄がある5083例を登録しました。医師はまず CT だけで方針を決め、CT-FFR の結果を見て方針を決め直しています。

中核検査室の判定では、CT-FFR を加えると治療方針の66.9%が変わりました。CT だけでは追加検査が要るとされた患者の70.0%が薬物治療に振り分けられ、CT で血行再建とされた患者の22.3%も薬物治療に変わりました。

注目すべきは、CT-FFR が0.80 以下でも、施設の医師が血行再建を勧めたのは34.4%だった点です。CT-FFR の区分ごとに見ると、0.71 未満では53.7%が90日以内に血行再建を受け、0.76〜0.80 では12.6%でした。医師は閾値の上下ではなく、数値の大きさと症状・病変の部位を合わせて判断していました。

CT-FFR の区分 90日までに血行再建を受けた割合
0.71 未満 53.7%
0.71〜0.75 23.9%
0.76〜0.80 12.6%
0.81〜0.85 5.4%
0.86〜0.90 2.9%
0.90 超 4.6%

CT-FFR が0.80 を超えた1592例では、90日以内の死亡と心筋梗塞はありませんでした。心事故19例はすべて0.80 以下で起き、そのうち18例は0.76 未満でした。

検査の効率と転帰の区別

PLATFORM と ADVANCE が示したのは、CT-FFR が不要なカテーテル検査を減らし、血行再建の判断に血流の根拠を添えるという、検査の効率と判断の質の改善です。

一方で、CT-FFR を使うと患者の予後が良くなるかは、どちらの研究も示していません。7-4ISCHEMIA 試験の記事で扱った「診断精度と治療効果の区別」は、ここでも当てはまります。冠動脈の壁面せん断応力の計算評価の総説3は、CT-FFR を使った戦略の試験で血行再建が増えたのに症状の改善も心事故の減少も示されなかった例を挙げています。

計算した FFR を臨床の文脈で説明するときは、閾値の上下だけでなく数値そのものを示し、検査の効率の改善と転帰の改善を書き分けることが、二つの研究から引き出せる実務上の結論です。

引用文献(3 本)

  1. 1

    Douglas PS, Pontone G, Hlatky MA ほか. Clinical outcomes of fractional flow reserve by computed tomographic angiography-guided diagnostic strategies vs. usual care in patients with suspected coronary artery disease: the prospective longitudinal trial of FFR(CT): outcome and resource impacts study. European Heart Journal. 2015.↩

    CT-FFR で心臓カテーテル検査の61%を中止 狭窄なしの検査73%→12%

  2. 2

    Fairbairn TA, Nieman K, Akasaka T ほか. Real-world clinical utility and impact on clinical decision-making of coronary computed tomography angiography-derived fractional flow reserve: lessons from the ADVANCE Registry. European Heart Journal. 2018.↩

    CT-FFR で治療方針の67%が変更 0.80 超の1592例は90日で死亡・心筋梗塞ゼロ

  3. 3

    Ekmejian AA, Carpenter HJ, Ciofani JL ほか. Advances in the Computational Assessment of Disturbed Coronary Flow and Wall Shear Stress: A Contemporary Review. Journal of the American Heart Association. 2024.↩

    CT 由来 WSS、心筋梗塞の予測で狭窄度を上回る ただし無作為化試験はいまだなし

ここで答えていない問い

  • 多枝病変で、FFR で病変を選んだ PCI は冠動脈バイパスに並ぶのか。

第7章「冠動脈の狭窄は、血流で測って治療を決められるのか」より 最終更新 2026-10-02