患者さん・ご家族へ
4D Flow MRI で自分の心臓の
血流を見てみませんか。
4D Flow MRI は、心臓と大血管を流れる血液の量・速さ・向きを、一度の撮影から数値と動画で確認する MRI 検査です。弁の逆流、血流の偏り、大動脈の太さなどをまとめたレポートを作成します。検査の適応は担当医が判断します。
線は血流の道すじを表し、色は流速を表します。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。
4D Flow MRI が検討される場面
弁や大血管の状態について、形だけでなく血流量・逆流・血流の偏りまで確認する必要があると担当医が判断した場合に検討されます。検査を受けたほうがよいかどうかは、症状と心エコー・CT・通常の MRI などの結果をふまえて担当医が判断します。
弁を通る血流を確認します
血液が流れる量と速さ、弁から逆流する割合を計測します。左心室と右心室から送り出される血流を個別に確認できます。
血流の偏りを動画で確認します
血流が壁に沿っているか、渦・らせん・局所的な衝突があるかを立体的に表示します。色は流速を表し、色だけで正常と異常を判定するものではありません。
大血管を全長にわたり計測します
大動脈と肺動脈の直径を、弁の直上から全長にわたり計測します。前回の結果がある場合は、同じ項目を並べて変化を確認できます。
4D Flow MRI の結果だけで診断や治療方針は決まりません。他の検査結果・症状・経過と併せて担当医が判断します。
数値と血流動画をまとめたレポート
流量・流速・逆流率・血管径などの数値を、撮影された血流の動画と併せて項目ごとに説明します。前回の結果がある場合は、大動脈径・流量・逆流率の変化も並べて提示できます。
撮影から結果説明まで
- 担当医にご相談ください適応は症状と他の検査結果をふまえて担当医が判断します。まず通院先の医療機関でご相談ください。
- 受診先で撮影条件を確認します撮影できる施設、所要時間、造影剤の使用、MRI を受ける際の注意事項、費用と保険の扱いは受診先の医療機関にご確認ください。
- 医療機関の MRI で撮影します撮影後のデータから、心臓と大血管の任意の断面・向きの血流を再構成できます。
- 撮影データを解析します当社が流量・流速・方向・血流パターンを数値と動画にまとめます。大動脈径は中心線に垂直な断面で全長にわたり計測します。
- 担当医から結果の説明を受けます解析結果は担当医を通じてお伝えします。数値の解釈と次回検査の時期については担当医の説明をお聞きください。
健常ボランティアの解析画像
線は流線で血流の道すじを表し、色は流速を表します。解剖学的な位置を追えるよう名称を記載しています。
左心室から大動脈弁を通り、上行大動脈を上って大動脈弓で向きを変え、下行大動脈へ下ります。中央部の流速が高く、壁の近くで低くなっています。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。
右心室から右室流出路を経て肺動脈へ向かう血流です。左心室の画像と同一心拍の同一時相を、同じ向きと倍率で描画しています。肺循環は圧が低いため流速も低くなります。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。
心室へ血液が流入する時相の血流です。流入血は直進せず心室内で渦を形成します。健常者にも生じる現象です。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。
青が低流速、赤が高流速を表します。色は流速のみを表し、正常と異常の判定は含みません。再生すると駆出と減速の繰り返しを確認できます。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。見本の説明を読む
レポートで確認する7項目
流量・最大流速・逆流率・血管径・心室機能は、学会ガイドラインや合意声明が示す基準と比較します。血流パターンは立体画像と動画で確認します。研究段階の指標は参考値として提示し、正常と異常の判定には使いません。
① 血流量
1回の拍動で送り出す血液量と、毎分送り出す血液量を計測します。
② 最大流速
弁や血管で流速が局所的に上昇していないかを確認します。
③ 逆流率
弁の閉鎖期に逆行する血液の割合を計測します。
④ 大動脈と肺動脈の径
弁の直上から全長にわたり直径を計測し、局所的な拡大がないかを確認します。
⑤ 左右の心室機能
左心室と右心室について、収縮期に送り出された血液の割合を個別に計測します。
⑥ 血流パターン
渦・らせん・偏り・同一部位への持続的な衝突がないかを確認します。緩やかな渦は健常者にも生じます。
⑦ 流体力学から導く指標
エネルギー損失とらせん流の強度を算出します。正常と異常を分ける基準は未確立で、研究段階の参考値です。
疾患ごとに現れる血流の特徴
健常者の血流は壁に沿って滑らかに流れます。渦も緩やかです。弁や血管に病変があると血流の様相が変わります。4D Flow MRI が捉えるのは次の特徴です。
左心室と大動脈を単純化した模型に、血流の向きと衝突部位のみを描いています。赤い矢印が問題となる血流、青い矢印が本来の血流です。
実在の患者のデータではありません。形状も寸法も説明のための模型で、色の濃さは流速を表しません。
大動脈弁狭窄
弁の開放が制限されるため、狭い開口部から細く速いジェットが噴出して上行大動脈の壁に衝突します。乱流運動エネルギーは狭窄例で 3〜52 mJ、健常例で 3 mJ 未満と報告されています。エネルギー損失も健常 2.3 mW に対し、拡大と狭窄を伴う例で 14.3 mWまで増加します。
大動脈弁逆流
弁の閉鎖期に大動脈から左心室へ血液が逆行します。逆行する割合が逆流率です。逆流分を再度駆出するため、同量を全身へ送るのに心臓は余分に働きます。
大動脈の拡大
拡大部で血流が渦を形成し、壁の近くで停滞します。拡大のみの例でもエネルギー損失は健常 2.3 mW に対し 3.6 mWへ増加していました。同じ報告では損失の71%が上行大動脈で発生します。
二尖弁
先天的に弁が2枚の例では、血流がらせんを描いて上行し上行大動脈の片側に強く衝突します。衝突が強い部位の壁組織ではエラスチンが 36.6%(正常部位 49.1%)まで減少し、線維が細くなっていました。血流の偏りと壁の変化が対応した例です。
記載した数値は報告された群の値です。エネルギー損失と壁せん断応力は研究段階の指標です。個人の状態を判定するものでも、将来を予測するものでもありません。
健常者の分布と並べて位置を提示します
心臓の仕事量は駆出量だけでは評価できません。同量を駆出しても、渦や逆流に費やされた分だけ余分な力を使っています。速度場から流体力学の計算を通してエネルギー損失を算出できます。
当社は健常ボランティア9名について同じ計算を実施し、その分布を基準として保有しています。体表面積で補正した値を並べれば、健常者の分布のどこに位置するかを提示できます。
灰色の帯が健常ボランティア9名の範囲、丸が9名それぞれの値、破線が平均です。★が見本の値で、範囲内では高い側に位置します。
エネルギー損失は研究段階の指標で、正常と異常を分ける基準は未確立です。位置の提示のみで判定は行いません。体表面積は仮定値のため、身長と体重が判明すると位置が変わります。
大動脈は全長にわたり径を計測します
大動脈は心臓から全身へ血液を送る最も太い動脈です。拡大は経過観察や治療の検討につながるため、径は最も基本的な指標です。撮影画像から大動脈の形状を抽出し、中心線に垂直な断面で全長の直径を計測します。
心臓の出口から上行し、弓状に屈曲して背側を下行します。この形状が計測の対象です。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。
矢状断と冠状断の2方向です。撮影画像に抽出した形状を重ねています。
健常ボランティアのデータによる見本です。診療用ではありません。大動脈の測定結果を読む
横軸が大動脈弁からの距離、縦軸が直径です。上行大動脈が最も太く、弓部を経て下行大動脈で細くなる形状が自然です。破線は経過観察の目安(45 mm)と手術検討の目安(55 mm)です。見本の最大径は 28 mm で、いずれの基準からも隔たりがあります。全長を計測するため、局所的な拡大があればグラフの山として現れます。
基準値は基礎疾患によって変わり、判断は担当医が行います。撮影画像から自動抽出した形状に基づく計測のため、CT や造影 MRI の計測値とは数 mm の差が生じます。
4D Flow MRI で評価できないこと
評価できる範囲と同様に、評価できない範囲も明示します。次の項目は対象外です。
- 血管壁の性状は評価できません。動脈硬化の進行度や壁の変性は対象外です。
- 冠動脈のような細い血管は評価できません。
- 将来の発症は予測できません。研究段階の指標も集団としての関連の報告であり、個人の予後を示すものではありません。
この検査の結果のみで診断は決まりません。他の検査結果・症状・経過と併せて担当医が判断します。結果の受け取り方についても担当医の説明をお聞きください。
臨床で使う指標と研究段階の指標
4D Flow MRI は研究目的での利用が先行し、国際的な専門家グループが2015年に撮像と解析の合意声明を発表して、2023年に改訂しました。方法の整備は進んでいますが、どの医療機関でも行う標準検査には至っていません。
2015年の合意声明では、流量・逆流率・最大流速・シャント率が臨床応用の指標に挙げられました。一方、エネルギー損失・らせん流の強度・壁せん断応力などには、施設をまたいで使える基準値がありません。研究段階の指標は参考値として提示し、診断や将来の発症予測には使いません。
当社は撮影データの解析とレポート作成を担当します。取り上げた文献は文献一覧に、指標の考え方は読み物に掲載しています。
よくある質問
渦があると異常なのですか。
渦自体は異常ではありません。健常者の心臓と大動脈にも緩やかな渦は生じます。問題になるのは渦が過度に強い場合と、同一部位に持続的に衝突する場合です。
右心系も評価できますか。
同一の撮影データから評価できます。右心室から肺動脈への血流と肺動脈径が対象です。左右のどちらを詳細に評価するかは、担当医が確認したい内容によって決まります。
流速が速いと危険なのですか。
速度の絶対値より、局所的に急上昇する部位の有無が重要です。弁や血管の狭窄部では流速が極端に上昇します。全体が滑らかに変化していれば、最大流速が大きくても狭窄を示すものではありません。
どの医療機関でも受けられますか。
撮像できる装置と解析体制がそろった施設で行われます。合意声明は導入時の妥当性確認を求めており、標準検査には至っていません。適応は担当医にご相談ください。
健常者と比較できますか。
エネルギー損失は当社が保有する健常ボランティア9名の分布と並べて位置を提示します。流量・流速・逆流率・血管径は学会ガイドラインの基準と比較します。いずれも位置と範囲の提示であり、診断は担当医が行います。
結果はどのくらいの期間有効ですか。
血流と血管の状態は年単位で変化します。次回検査の時期は大動脈径・他の検査結果・経過をふまえて担当医が判断します。指示された時期に受診してください。
2回目以降の検査では何がわかりますか。
大動脈径・流量・逆流率の変化を前回の結果と並べて提示できます。特に大動脈径は年間の変化量が経過評価に重要です。
研究段階の指標とは何ですか。
エネルギー損失・らせん流の強度・壁せん断応力などです。心臓と血管の負荷を表す指標として研究が進んでいますが、正常と異常を分ける基準は未確立です。参考値として提示し、判定は行いません。
レポートで使う用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 1回拍出量 | 1回の拍動で駆出される血液量です。 |
| 心拍出量 | 毎分の駆出量で、1回拍出量に心拍数を乗じた値です。 |
| 駆出率 | 収縮期に駆出された血液の割合です。 |
| 逆流率 | 弁の閉鎖期に逆行する血液の割合です。 |
| 流線 | 血流の向きに沿って引いた線で、血流の道すじを表します。 |
| 中心線 | 血管の中央を通る線で、直径を計測する断面の向きを決めます。 |
| ジェット | 狭窄部を通過した直後に細く高速で噴出する血流です。 |
| エネルギー損失 | 血流が熱などへ変換されて失われるエネルギーで、研究段階の指標です。 |
| らせん流 | らせんを描いて進む血流です。健常者にも生じます。 |
| 壁せん断応力 | 血流が血管壁を擦る力で、研究段階の指標です。 |
当社の担当範囲
掲載内容は情報提供を目的としています。特定の診断や治療を推奨するものではありません。検査の適応は担当医が判断します。
当社は撮影データの解析とレポート作成を担当します。診療は行いません。症状のご相談は通院先の医療機関へお願いします。解析方法や結果の提示方法へのご質問は当社のお問い合わせ窓口へお寄せください。掲載内容へのご指摘も歓迎します。
最終更新 2026-09-16