4D Flow MRI は、心臓と大血管の中を血液がどう流れているかを、立体的に撮影する検査です。この検査では主に次の 3 つを見ます。
さらに、④ 血流の流れ方(渦や偏り)、⑤ 大動脈の太さ、⑥ 血流の効率(高度な血流解析)もあわせて評価しています。
今回の検査では、心臓から大動脈への血液の流れについて、量・速さ・向き・流れ方のいずれにも問題となる所見はありませんでした。心臓のポンプ機能(駆出率 63%)も保たれており、大動脈の太さも最も太いところで 28mm と、経過観察の範囲です。
以下では、それぞれの項目について実際の血流の動画とあわせて説明します。動画は自動で繰り返し再生されます。
心臓が 1 回の拍動で、また 1 分間にどれだけの血液を送り出しているかを見ます。全身に十分な血液が行き渡っているかの基本になる数字です。
1 分間に 5.6 L、1 回の拍動で 59 mL の血液が送り出されていました。成人の一般的な範囲(1 分間に 4〜8 L)の中に入っています。
1 心拍のあいだの流量の変化。山が 1 つで、送り出しが一方向にまとまっていることを示します。
血管や弁が狭くなっていると、そこを通る血流が異常に速くなります。どこかに異常に速い流れ(ジェット)が無いかを見ます。
最も速いところで 1.5 m/秒 でした。大動脈弁が狭くなっている場合の目安(4.0 m/秒以上で重症)と比べて十分に低く、狭窄を示す所見はありません。
心拍に合わせて速さが上がり、その後ゆるやかに戻ります。
心臓の弁は血液を一方向にだけ流す弁です。弁が閉じている間に血液が逆向きに戻っていないか(逆流)を見ます。
逆流の割合は 5 % 程度で、ごくわずかでした。日本循環器学会のガイドラインで軽度とされる範囲(30 % 未満)よりさらに小さい値です。
血液が血管の壁に沿って滑らかに流れているか、渦を巻いたり片側に偏ったりしていないかを見ます。血管への負担や、将来の血管の変化に関わります。
血流は血管の壁に沿って滑らかに流れており、渦や片寄った流れは見られませんでした。
最も大きいとき 137 mL、最も小さいとき 51 mL。この差が 1 回に送り出される量にあたり、駆出率は 63 % です。
大動脈は心臓から全身へ血液を送る一番太い血管です。ここが太くなってくると経過観察や治療の検討が必要になるため、太さは大動脈の状態を見るうえで最も基本になる数字です。
大動脈弁のすぐ先(0 mm)から下向きにたどった、各位置での直径。ピンクの破線は上行大動脈で注意して経過を見るとされる目安(45 mm)です。
最も太いところは 28 mm(大動脈弁から 52 mm の位置=上行大動脈)でした。上行大動脈で注意してみていく目安(45 mm 前後)や、手術を検討する目安(55 mm 前後)と比べて十分に細く、局所的にふくらんでいる場所もありません。

計測に使った大動脈の形(横から)

同(正面から)
大動脈の中心を通る線を自動で引き、その線に垂直な面での直径を全長にわたって計測しています(142 点、全長 261 mm)。MRI 画像から自動で抽出した形に基づく計測のため、CT や造影 MRI での計測値とは数 mm の差が出ることがあります。
近年、大動脈が太くなりやすい方には、血流に共通の特徴があることが報告されています。ここではその特徴が出ていないかを見ます。まだ研究段階の指標で、将来を予測するものではありません。
| 見ている特徴 | あなたの結果 | 報告されていること |
|---|---|---|
| 収縮期の逆向きの流れ | 0 %(ほとんど無し) | 上行大動脈が太い方ほど多いと報告(655 名の研究) |
| らせん流の強さ | 収縮期に一過性のみ | 二尖弁の方では収縮期を通じて強く続くことが多い |
| 流れの偏り | 偏りなし(動画 04) | 偏った流れは拡大の速さと関連する報告あり |
いずれの特徴も認められませんでした。収縮期に逆向きに戻る成分はほとんど検出されず(0 %)、らせん流も収縮期に一時的に上がるだけで、拡張期には戻っています。
血液を送り出すタイミングで一時的に上がり、その後戻ります。健康な方に見られる自然な変化のしかたです。
血液が流れるときに失われるエネルギーの量を計算したものです。心臓の負担を表す指標として研究が進んでいますが、まだ研究段階の指標です。
灰色の帯と点が当社の健常者データ(9 名)の分布、破線がその平均です。★が今回の値です。
今回の体表面積で補正した値は 1.20 mW/m²(補正前 2.0 mW)で、当社の健常者データ(9 名)の範囲 0.46〜1.20 のなかでは高めの位置でした。研究段階の指標であり、この値だけで心臓の状態を判断するものではありません。また体表面積は仮定値(1.7 m²)のため、実際の身長・体重が分かると位置が変わります。
送り出しのタイミングで一時的に大きくなり、その後おさまります。研究段階の指標のため、判定は行っていません。
渦そのものは異常ではありません。健康な方の大動脈にも、ゆるやかな渦は生じます。問題になるのは、渦が強すぎる場合や、血管の同じ場所にいつも強く当たり続ける場合です。今回はそのような所見はありませんでした。
速さ自体より、「どこで急に速くなるか」が重要です。弁や血管が狭くなっていると、その部分だけ極端に速くなります。今回は全体が滑らかで、そのような場所はありませんでした。
血液が流れるときに失われるエネルギーの量です。心臓の負担を表す指標として研究が進んでいますが、まだ研究段階の指標で、この値だけで心臓の状態を判断するものではありません。参考としてご覧ください。
一般に、上行大動脈は 45 mm あたりから注意して経過を見て、55 mm 前後で手術を検討する、という目安が使われます(基礎疾患により基準は変わります)。判断は担当医が行います。
血管の壁そのものの性状(動脈硬化の程度や壁の傷み)、細い血管(冠動脈など)の評価はこの検査の対象外です。また、この検査は将来の発症を予測するものではありません。
血流や血管の状態は年単位で変化します。次回の検査時期は担当医の指示に従ってください。
同一量に複数の推定法があるものは、本文に出す代表値を解析側で確定した。原則:絶対量は直接測っている方法、比は誤差が相殺される方法を採用する。
| 指標 | 本文の代表値 | 採用方法 | 採用しなかった値 |
|---|---|---|---|
| 心拍出量 / 1回拍出量 | 5.60 L/min / 59 mL | 弁通過断面の実測流量 | 体積法 8.15 L/min / 85.9 mL |
| 駆出率 EF | 62.7 % | 体積法 (EDV−ESV)/EDV | — |
| 逆流率 | 5.4 % | 断面流量(比のため位置にロバスト) | — |
| 最大流速 | 1.51 m/s | 速度場から直接 | — |
| Energy Loss | 2.03 mW | マスク内・心周期平均 | ピーク 5.42 mW |
| 大動脈径 | 最大 27.7 mm | AI セグメンテーション(Heart_AO)+中心線垂直断面 | CT / 造影 MRA での計測(未実施) |
収縮期(160 ms)の AI 心臓セグメンテーションで Heart_AO を作成し、
centerline verb(CenterlineService.ExtractAuto:細線化 → 最長路 →
各点で中心線に垂直な平面へレイを飛ばし、マスクを抜けるまでの平均半径 × 2)で計測した。
点数 142、全長 261.3 mm、計測点 114。
弁側の端点と末梢端はマスクの端面でレイが抜けるため、両端 10 % を集計から除外している。
解剖の割り当ては世界座標の Z(頭方向)から決定:arc 0 が弁側、Z 最大(arc 96 mm)が弓部頂点。
弁直上断面の流量波形のうち、駆出が終わるまで
(位相 0〜6、22〜295 ms)を収縮期として、
逆行成分 ÷ 前方成分で算出:前方 30.3 mL / 逆行 0.00 mL → 0.0 %。
上行大動脈径が大きいほど収縮期逆行流が増えること、二尖弁では狭窄・逆流が無くても健常比
+222 % となることが報告されている(J Cardiovasc Magn Reson 2022, n=655)。
本症例は健常ボランティアで、逆行成分はほぼ検出されなかった。
断面積分は内腔ゲートを持たないため絶対流量は使えないが、SFRR は同一断面内の比であり
断面位置に対して比較的ロバストである。ただし本データは 14 位相(間隔 45 ms)で時間分解能が粗く、
短時間の逆行成分を取りこぼす可能性がある。
患者さん向けの各項目に、左端=異常・右端=正常の横棒ゲージを置いた。区分は確立した基準がある指標に限り設定し、研究段階の指標(Energy Loss・収縮期逆行流率・らせん流)には意図的にゲージを付けていない——正常/異常の軸を引くこと自体が判定を与えてしまうため。区分は等幅で描き、区分内は線形補間している。
| 指標 | 区分(異常→正常) | 根拠 |
|---|---|---|
| 最大流速 | ≥4.0 重症 / 3.0-4.0 中等度 / 2.0-3.0 軽度 / <2.0 正常 [m/秒] | 大動脈弁狭窄症の重症度(ACC/AHA 2020, ESC) |
| 逆流率 | ≥50 重症 / 30-50 中等度 / 10-30 軽度 / <10 ごく軽度〜なし [%] | 弁膜症治療ガイドライン(JCS/JATS/JSVS/JSCS 2020) |
| 大動脈径(上行) | ≥55 手術検討 / 45-55 注意 / 40-45 経過観察 / <40 正常 [mm] | 一般的な目安。施設として採用する基準は要確認 |
| 駆出率 EF | <40 低下 / 40-50 軽度低下 / ≥50 正常 [%] | 一般的な区分 |
| 心拍出量 | <3 低い / 3-4 やや低い / 4-8 正常 [L/分] | 成人の一般的範囲。両側性の指標のため、左端=異常・右端=正常の 1 軸では「高すぎる」側を表現できない点に留意 |
| 指標 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| EDV / ESV | 137.0 / 51.1 mL | AI セグメンテーション 8 位相 |
| 左心房容積(最大) | 80.6 mL | 肺静脈起始部・左心耳を含むため過大評価 |
| Cardiac Index | 3.29 L/min/m² | 体表面積 1.7 m²(仮定)に依存 |
| Energy Loss Index | 1.20 mW/m² | 同上。EL 分類は 0(社内定義) |
| らせん流(渦度の体積積分) | ピーク 0.0147 m³/s | 健常者の基準値なし |
| 心拍 | 94.9 bpm | 心周期 632.5 ms / 14 位相 |
| データ | healthynp.itflow3 |
| 形態画像 | 86×125×70、14 位相 |
| 速度データ | 83×121×30、14 位相 |
| 定量エンジン | iTFlow4 quantify(速度取得格子上の 3D 勾配テンソル体積積分) |
| 径計測 | centerline(CenterlineService.ExtractAuto) |
| 動画 | export_movie(固定カメラ・7 fps・14 位相)→ ffmpeg H.264 |
| 3D ビューア | export_html_3d / export_volume_html |
PC:右ドラッグ=回転/ホイール=ズーム スマホ:1本指=回転/2本指=ズーム