原著 EuroIntervention 2019 解析実務に直答 研究の着想 原文精読済み

冠動脈バイパスの吻合先を FFR で決めるとグラフト開存は変わるか — GRAFFITI 試験

Graft patency after FFR-guided versus angiography-guided coronary artery bypass grafting: the GRAFFITI trial

Toth GG, De Bruyne B, Kala P, Ribichini FL, Casselman F, Ramos R, Piroth Z, Fournier S, Piccoli A, Van Mieghem C, Penicka M, Mates M, Nemec P, Van Praet F, Stockman B, Degriek I, Barbato E.

問い

冠動脈バイパスで、FFR が虚血を示さない血管への吻合を省くと、グラフトの開存と転帰は変わるのか。

答え

172例を造影ガイドと FFR ガイドのバイパスに割り付け、FFR ガイド群は吻合数が減り(中央値3か所→2か所)、オフポンプ手術と低侵襲手術が増えました。1年のグラフト開存は80% と81%で差がなく、死亡・心筋梗塞・標的血管再血行再建・脳卒中にも差はありませんでした。

当社の視点

FFR が 0.80 を超える血管に吻合したグラフトは閉塞しやすいという過去の登録研究から、FFR で吻合先を選べば開存率が10ポイント上がると想定した試験でしたが、差は出ませんでした。登録された病変の4分の3が FFR で有意だったため、見送る吻合が少なく、試験の検出力が足りなかったと著者は考察しています。グラフトが開存するかどうかは自己冠動脈の FFR とも狭窄度とも相関しませんでした。グラフトの開存を決めるのは自己冠動脈の狭窄の重症度だけではなく、吻合の形状や競合血流を含む局所の血流である可能性を示しており、グラフト設計の数値流体解析が扱う問いに直接つながります。

扱う範囲

  • 01

    試験の設計

    欧州6施設で、左前下行枝か左主幹部に有意病変があり、ほかに中間狭窄(目視30〜90%)の血管を持つ患者を対象にしました。全中間狭窄の FFR を測って伏せたまま、外科医が造影で術式を決め、その後に割り付けました。FFR 群では値を開示し、0.80 以下に吻合、0.80 超は見送るよう術式を変更させました。

  • 02

    術式の変化

    FFR 群は吻合数の中央値が2か所(造影群3か所)で、主に静脈グラフトが減りました。オフポンプ手術は31% と14%、低侵襲手術は10% と2%でした。

  • 03

    機能的に適切な血行再建

    FFR を基準に評価すると、造影群では吻合の約4分の1が虚血を起こさない狭窄の血管に置かれ、過剰治療か虚血領域の取り残しを含む不適切な術式が62%に達しました。

  • 04

    グラフト開存と自己冠動脈

    1年の開存は全体で80% と81%でした。開存したグラフトと閉塞したグラフトで、自己冠動脈の径狭窄(70% と70%)にも FFR(0.69 と0.65)にも差はありませんでした。

  • 05

    必要な症例数

    グラフト開存の差を検出するには1群574例、臨床転帰の非劣性を示すには1群約2900例が必要と著者は計算しています。

GRAFFITI の主な結果

項目値補足
対象 172例 造影ガイド84例・FFR ガイド88例。登録不良で早期中止
FFR が正常だった狭窄 27% 測定した全狭窄に対する割合
吻合数の中央値 3か所 → 2か所 造影群 → FFR 群、P=0.004
1年のグラフト開存 80% と 81% 主に冠動脈 CT で評価(90.2%)
機能的に適切な吻合の割合 68% → 79% P=0.008
オフポンプ手術 14% → 31% P=0.010

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • グラフトの開存を論じるときは、自己冠動脈の FFR と開存が相関しなかった結果を前提に置きます。
  • 冠動脈バイパスの血流解析では、自己冠動脈の狭窄度だけでなく、吻合部の形状と競合血流の条件を記録します。
  • GRAFFITI の結論を「FFR はバイパスに無益」と言い換えず、検出力不足の試験であることを併記します。

この試験が扱わない範囲

  • 登録が遅く予定の206例に達せず、1年の造影追跡も約3分の2の患者に限られます。
  • 自己冠動脈の病変が限局性かびまん性かのデータはありません。
  • FFR 群でも、0.80 未満の血管の29%には技術的理由で吻合できず、0.80 超の血管の11%に吻合していました。
  • 追跡は1年で、臨床転帰の差が出るとされる3年以降は扱っていません。

書誌情報

原題Graft patency after FFR-guided versus angiography-guided coronary artery bypass grafting: the GRAFFITI trial
著者Toth GG, De Bruyne B, Kala P, Ribichini FL, Casselman F, Ramos R, Piroth Z, Fournier S, Piccoli A, Van Mieghem C, Penicka M, Mates M, Nemec P, Van Praet F, Stockman B, Degriek I, Barbato E.
掲載誌EuroIntervention(2019)
DOI10.4244/EIJ-D-19-00463
PMID31270037

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