造影2方向から計算する QFR はカテ室で FFR の代わりになるか — FAVOR II Europe-Japan 研究
Diagnostic Performance of In-Procedure Angiography-Derived Quantitative Flow Reserve Compared to Pressure-Derived Fractional Flow Reserve: The FAVOR II Europe-Japan Study
侵襲的造影の2方向の画像と造影剤の流れる速さから計算する QFR は、圧ワイヤーの FFR とどれだけ一致し、カテ室でその場で使えるのか。
11施設317病変で、QFR の感度86.5%・特異度86.9%は、2次元の定量造影の44.2%・76.5%を上回りました。FFR との差は平均0.01±0.06、計算時間の中央値は5.0分で FFR の7.0分より短くなりました。ただし FFR 0.75〜0.84 の病変では正診率が71.3%に下がりました。
当社の視点
QFR は CT-FFR と違い、3次元の数値流体解析を解かず、造影2方向から再構成した3次元内腔と、造影剤が進む速さから数えた流速で圧の比を推定します。境界条件を集団の法則で決める CFD 方式の「全員に同じ条件を当てる」限界と計算時間の長さを、著者は従来法の弱点として挙げています。一方で、フレームの選択・内腔の輪郭・造影剤の追跡に人の操作が入るため、カテ室での計算と中核検査室の再計算の間に平均 −0.03±0.07 の偏りが出ました。計算方式の違いによって、何が速くなり何が操作者に依存するようになるかを説明する材料になります。
扱う範囲
-
01
QFR の計算
拡張末期の2方向の造影から血管を3次元に再構成し、近位と遠位の健常部に合わせて基準血管を作ります。造影剤が血管を進むフレーム数から流速を推定し(フレームカウント法)、充血薬を使わずに圧の比を求めます。
-
02
撮影の手順
毎秒12.5フレーム以上で、短縮と重なりが少ない2方向を推奨角度の表から選び、拡大や寝台の移動をせずに圧センサーの位置まで血管全体を写しました。中核検査室が毎日撮影の品質を施設に返しました。
-
03
閾値付近の成績
FFR が 0.55〜0.64 では正診率100%、0.65〜0.74 では92.7%、0.75〜0.84 では71.3%、0.85 以上では93.9%でした。絶対差は FFR の区分によらず0.04〜0.07でした。
-
04
圧ワイヤーとの併用
QFR 0.77 以下を治療、0.87 以上を見送りとし、その間だけ圧ワイヤーで測る併用方式なら、FFR を基準に95%の正診率を保ちながら64%の病変で圧ワイヤーとアデノシンを省けると計算しました。
-
05
誤差の要因
糖尿病は QFR と FFR の食い違いの拡大と関連しました。強い狭窄の輪郭抽出が難しい可能性も挙げています。
FAVOR II Europe-Japan の主な結果
数値で確かめる
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 対象 | 272例・317病変(11施設) | FFR 平均0.83、0.80 以下は33% |
| 感度・特異度 | QFR 86.5%・86.9% | 2次元定量造影は44.2%・76.5% |
| 曲線下面積 | 0.92 と 0.64 | QFR と2次元定量造影 |
| FFR との差 | 平均0.01±0.06 | 相関 r=0.83 |
| 正診率(FFR 0.75〜0.84) | 71.3% | 他の区分は92.7〜100% |
| 計算時間の中央値 | QFR 5.0分・FFR 7.0分 | 撮影とデータ転送の時間は含まない |
| カテ室と中核検査室の QFR の差 | 平均 −0.03±0.07 | 操作者による偏り |
いずれもこの論文が報告した値です。参照基準は FFR 0.80 以下です。
実務チェック
- 計算した圧比の成績を報告するときは、FFR の区分ごとの正診率を示し、閾値付近で下がることを明記します。
- 操作者の入力(フレーム選択・輪郭・流速の推定)が入る計算では、操作者間の差を別に報告します。
- 撮影の条件(フレーム数・方向・短縮と重なり)を記録し、計算値の前提として示します。
この研究が扱わない範囲
- 心筋梗塞後の非責任病変は少数しか含まれていません。
- Medina 1.1.1 と 1.0.1 の分岐部病変は除外されています。
- 直列病変でも FFR の引き抜き曲線は必須でなく、QFR の空間分布との比較はしていません。
- FFR だけを基準にしており、微小循環障害の影響は評価していません。臨床転帰も扱っていません。
書誌情報
| 原題 | Diagnostic Performance of In-Procedure Angiography-Derived Quantitative Flow Reserve Compared to Pressure-Derived Fractional Flow Reserve: The FAVOR II Europe-Japan Study |
|---|---|
| 著者 | Westra J, Andersen BK, Campo G, Matsuo H, Koltowski L, Eftekhari A, Liu T, Di Serafino L, Di Girolamo D, Escaned J, Nef H, Naber C, Barbierato M, Tu S, Neghabat O, Madsen M, Tebaldi M, Tanigaki T, Kochman J, Somi S, Esposito G, Mercone G, Mejia-Renteria H, Ronco F, Bøtker HE, Wijns W, Christiansen EH, Holm NR. |
| 掲載誌 | Journal of the American Heart Association(2018) |
| DOI | 10.1161/JAHA.118.009603 |
| PMID | 29980523 |