原著 Journal of the American College of Cardiology 2011 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

冠動脈 CT から計算した FFR で虚血を起こす狭窄を診断できるか — DISCOVER-FLOW 試験

Diagnosis of ischemia-causing coronary stenoses by noninvasive fractional flow reserve computed from coronary computed tomographic angiograms. Results from the prospective multicenter DISCOVER-FLOW study

Koo BK, Erglis A, Doh JH, Daniels DV, Jegere S, Kim HS, Dunning A, DeFrance T, Lansky A, Leipsic J, Min JK.

問い

冠動脈 CT の画像から数値流体解析で計算した FFR は、圧ワイヤーで測った FFR とどれだけ一致し、CT の狭窄度より虚血をよく見分けられるのか。

答え

4施設103例159血管で、血管単位の正診率は FFRCT 84.3%、CT の50%以上狭窄58.5%でした。特異度が82.2% と39.6%で大きく違い、FFRCT は狭窄度だけによる偽陽性を減らしました。FFRCT と FFR の相関係数は0.717で、FFRCT は平均0.022低く出ました。

当社の視点

CT の形状から計算した圧の比を、同じ血管の圧ワイヤーの実測と突き合わせた最初の前向き多施設研究です。CT の狭窄度は感度が高い一方で特異度が低く、狭く見える病変の多くが虚血を起こしていないことを、計算した FFR が見分けた点が要点です。一方、一致の度合いを示す Bland-Altman の差の標準偏差は0.116で、閾値0.80の近くでは個々の血管の判定が入れ替わりうる幅です。解析は1検査あたり約5時間を要し、資金提供と FFRCT の計算は同じ企業が担っています。計算値を臨床判断に使う相談では、平均の一致だけでなく個々のばらつきの幅を示す材料になります。

扱う範囲

  • 01

    対象と参照基準

    CT で径2.0 mm 以上の主要冠動脈に50%以上の狭窄があり、臨床的に侵襲的造影と FFR を受けた安定患者を対象にしました。FFR は充血下で測り、0.80 以下を虚血とし、センサーの位置を記録して同じ点で FFRCT を計算しました。

  • 02

    FFRCT の三つの原理

    安静時には冠血流が心筋の需要を満たしている(安静時狭心症は除外)、安静時の微小循環抵抗は栄養血管の大きさに反比例する(線形ではない)、正常な冠血流の患者では微小循環が最大充血に予測可能な反応をする、という三つを前提にしています。

  • 03

    中間狭窄での成績

    CT で50〜69%の47血管のうち25.5%が FFR で虚血でした。この群で FFRCT の正診率は83.0%で、見逃した4血管はいずれも実測 FFR が0.75〜0.80でした。

  • 04

    形態との組み合わせ

    受信者動作特性曲線下面積は FFRCT 0.90、CT 狭窄度0.75でした。FFRCT に CT の狭窄度を加えても面積は改善しませんでした。

  • 05

    亜完全閉塞の扱い

    99%狭窄の6血管は FFR を測れないため主解析から除きました。FAME 試験のように0.50 とみなすと正診率は84.8%に上がります。

DISCOVER-FLOW の診断成績(血管単位)

血管単位の診断成績。FFRCT は特異度で CT の狭窄度を大きく上回った
数値で確かめる
項目値補足
対象 103例・159血管 4施設
正診率 FFRCT 84.3%・CT 狭窄度58.5% —
感度 87.9% と 91.4% —
特異度 82.2% と 39.6% —
曲線下面積 0.90 と 0.75 P<0.001
FFRCT と FFR の差 平均 −0.022(SD 0.116) FFRCT がわずかに低い。相関0.717
解析時間 約5時間/検査 —

いずれもこの論文が報告した値です。参照基準は侵襲的 FFR 0.80 以下です。

実務チェック

  • 計算した FFR と実測の一致を報告するときは、相関係数だけでなく差の平均と標準偏差を示します。
  • 閾値0.80の近くの病変では、計算値と実測の差の標準偏差(0.116)が判定を入れ替えうる幅であることを書き添えます。
  • 計算値と実測値を比べるときは、圧センサーの位置と計算値を読む位置を一致させます。

この研究が扱わない範囲

  • 血管単位で検出力を設計しており、患者単位の成績は別の試験で検証するとしています。
  • 臨床的に侵襲的検査を受けた患者だけが対象で、CT を受けた全患者での成績ではありません。
  • 冠動脈バイパス術後の患者は除外されています。
  • 試験の資金提供と FFRCT の計算は HeartFlow 社が担っています。

書誌情報

原題Diagnosis of ischemia-causing coronary stenoses by noninvasive fractional flow reserve computed from coronary computed tomographic angiograms. Results from the prospective multicenter DISCOVER-FLOW study
著者Koo BK, Erglis A, Doh JH, Daniels DV, Jegere S, Kim HS, Dunning A, DeFrance T, Lansky A, Leipsic J, Min JK.
掲載誌Journal of the American College of Cardiology(2011)
DOI10.1016/j.jacc.2011.06.066
PMID22032711

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