総説 Journal of the American College of Cardiology 2013 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

冠動脈 CT に数値流体解析を当てて FFR を求める原理 — FFRCT の科学的基盤

Computational fluid dynamics applied to cardiac computed tomography for noninvasive quantification of fractional flow reserve: scientific basis

Taylor CA, Fonte TA, Min JK.

問い

冠動脈 CT の画像だけから、圧ワイヤーで測る FFR をどうやって計算しているのか。何を仮定しているのか。

答え

CT から内腔の形状を抽出し、心臓・体循環・冠微小循環を集中定数模型で境界条件にして流れを解きます。安静時の総冠血流は心筋量から、各出口の抵抗は血管径から決め、最大充血は総抵抗を安静時の0.24倍に下げて表します。微小循環障害があると血管拡張を過大に見込み、計算値が実測 FFR より低く出ます。

当社の視点

CT-FFR の境界条件の決め方を、開発者自身が説明した文書です。患者ごとの流量の実測値を使わず、心筋量と総冠血流の比例関係、血管径と流量の関係(Murray 則)、健常者の充血時の抵抗低下率という集団の法則で境界条件を決めている点が要点です。計算の精度は形状だけでなく、こうした法則が目の前の患者に当てはまるかに依存します。当社が冠動脈の解析で境界条件を説明するとき、形状が同じでも境界条件の決め方で値が変わることを示す一次資料として使えます。著者2名は FFRCT を提供する企業の社員で株主です。

扱う範囲

  • 01

    形と機能の関係

    安静時の総冠血流は心筋量に比例し、心筋量は CT の心筋体積から求めます。血管は内皮が感じる WSS を一定に保つよう径を調整するので、Poiseuille の式から流量は径の3乗に比例し(Murray 則)、各枝の抵抗は径の同じべき乗に反比例します。

  • 02

    計算の構成

    大動脈基部と心外膜冠動脈を CT から抽出して有限要素法で解きます。入口には左室の集中定数模型を、大動脈出口には体循環の模型を、冠動脈の出口には心筋内圧を含む微小循環の模型をつなぎます。心拍出量は相対成長則に、平均大動脈圧は上腕血圧に合わせます。

  • 03

    最大充血の表現

    正常な冠血流予備能を持つ血管ではアデノシン 140 μg/kg/分で総冠抵抗が安静時の0.24倍に下がるという測定に基づき、全出口の抵抗を下げます。微小循環障害の患者ではこの値が拡張の上限になります。

  • 04

    理想化した例

    径 3.5 mm、径狭窄60%の左前下行枝の模型で、出口抵抗を4.5分の1にすると流量が 1 mL/秒から 3.6 mL/秒に増え、Pd/Pa は安静時0.97から充血時0.79に下がります。

  • 05

    CT 形態との比較

    DISCOVER-FLOW では血管単位の正診率が FFRCT 84.3%、CT の狭窄度58.5%でした。DeFACTO では患者単位で73% と64%で、中間狭窄(30〜70%)では感度が37%から82%に上がりました。

FFRCT の境界条件と検証値

項目値補足
充血時の総冠抵抗 安静時の0.24倍 正常 CFR の血管、アデノシン 140 μg/kg/分(Wilson らの測定)
血管径と流量の関係 Q ∝ d^k(Murray は k=3) WSS 一定の仮定から導かれる
理想化模型の FFR 安静時 Pd/Pa 0.97 → 充血時0.79 径 3.5 mm・径狭窄60%、計算値
DISCOVER-FLOW の血管単位正診率 FFRCT 84.3%・CT 狭窄度58.5% —
DeFACTO の患者単位正診率 73% と 64% FFRCT と CT 狭窄度

いずれもこの総説が記載・引用した値です。

実務チェック

  • 冠動脈の解析で FFR を計算するときは、総冠血流・各出口の抵抗配分・充血時の抵抗低下率をそれぞれ何から決めたかを記録します。
  • 微小循環障害が疑われる患者では、充血時の抵抗低下を健常者の値で与えると計算値が低く出ることを、結果に書き添えます。
  • 石灰化・動き・位置ずれのアーチファクトが内腔形状を通じて計算値に響くため、撮像の品質を記録します。

この総説が扱わない範囲

  • ステント内再狭窄と冠動脈バイパスのグラフトについては、発表時点で FFRCT のデータがないと明記しています。
  • 境界条件の各法則が患者ごとにどれだけばらつくかの定量は示していません。
  • 著者は FFRCT を提供する企業の社員・株主を含みます。

書誌情報

原題Computational fluid dynamics applied to cardiac computed tomography for noninvasive quantification of fractional flow reserve: scientific basis
著者Taylor CA, Fonte TA, Min JK.
掲載誌Journal of the American College of Cardiology(2013)
DOI10.1016/j.jacc.2012.11.083
PMID23562923

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