原著 The New England Journal of Medicine 2017 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

安定狭心症と急性冠症候群で iFR と FFR のどちらで治療を決めるか — iFR-SWEDEHEART 試験

Instantaneous Wave-free Ratio versus Fractional Flow Reserve to Guide PCI

Götberg M, Christiansen EH, Gudmundsdottir IJ, Sandhall L, Danielewicz M, Jakobsen L, Olsson SE, Öhagen P, Olsson H, Omerovic E, Calais F, Lindroos P, Maeng M, Tödt T, Venetsanos D, James SK, Kåregren A, Nilsson M, Carlsson J, Hauer D, Jensen J, Karlsson AC, Panayi G, Erlinge D, Fröbert O, iFR-SWEDEHEART Investigators.

問い

iFR と FFR が同じ病変を別に分類するとき、どちらで治療を決めても転帰は同じなのか。

答え

2037例の登録研究基盤の無作為化試験で、1年の死亡・心筋梗塞・予定外血行再建は iFR 群6.7%、FFR 群6.1%で、iFR の非劣性が示されました。虚血と判定された病変は iFR 群29.1%、FFR 群36.8%で、指標によって分類が異なっても転帰に差は出ませんでした。手技中の胸部不快感は3.0% と68.3%でした。

当社の視点

二つの指標の分類が食い違う病変の多くは閾値付近の中間病変で、そこでは死亡と心筋梗塞の発生率がもともと低いため、分類の違いが転帰に響きにくいという説明が示されています。著者は、充血が正常な冠血流のままでも圧を閾値以下に下げるため、FFR は中間病変の重症度を過大に評価しやすいという研究も引いています。連続量の指標を閾値で二分すると情報を失うという限界を、著者自身が書いている点も、解析結果を報告する立場から参考になります。

扱う範囲

  • 01

    iFR の定義

    拡張期のうち、微小循環の抵抗が低く安定している区間で、病変前後の安静時圧比を求める指標です。アデノシンのような充血薬を使わずに、その場で評価できます。

  • 02

    登録研究を基盤にした設計

    スウェーデンの全国冠動脈造影・形成術登録(SCAAR)の中で割り付けと追跡を行い、スウェーデン・デンマーク・アイスランドの15病院で2037例を登録しました。追跡脱落はありませんでした。

  • 03

    対象と閾値

    安定狭心症、不安定狭心症、非 ST 上昇型心筋梗塞で、目視40〜80%の病変を対象にしました。急性冠症候群では責任病変以外を評価し、80%以上の狭窄は生理学的評価なしで治療しました。iFR 0.89 以下、FFR 0.80 以下で血行再建を行いました。

  • 04

    評価した病変の個数

    iFR 群は1例あたり1.55病変、FFR 群は1.43病変を評価しました。アデノシンによる胸部不快感のために、FFR 群では医師が追加の病変を評価しにくかった可能性があると著者は書いています。

  • 05

    FFR の閾値の妥当性

    FFR は 0.75 を閾値にしたほうが他の虚血指標とよく対応するという検証研究があり、FAME と同じ 0.80 は最適でない可能性があるとしています。

iFR-SWEDEHEART の主な結果

項目値補足
対象 2037例(解析2019例) 安定狭心症62.0%
測定値の平均 iFR 0.91・FFR 0.82 —
虚血と判定された病変 29.1% と 36.8% iFR 群と FFR 群、P<0.001
1年の死亡・心筋梗塞・予定外血行再建 6.7% と 6.1% 差0.7ポイント、非劣性 P=0.007
手技中の胸部不快感 3.0% と 68.3% P<0.001
iFR と FFR の分類の一致率 80〜85% 先行研究の値(iFR 閾値0.89)

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • iFR と FFR の分類の一致は先行研究で80〜85%にとどまることを、二つの指標を比べるときに前提に置きます。
  • 分類の食い違いは閾値付近に集中するため、閾値付近の病変を計算で判定するときは、指標の選択と不確かさを併記します。
  • 非劣性の限界がハザード比で1.40相当と広いことを踏まえて引用します。

この試験が扱わない範囲

  • 割り付けは医師と患者に知らされており、予定外血行再建の判断に偏りが入りえます。
  • 冠動脈バイパスも血行再建に含めましたが、バイパスで FFR を使う利益の根拠は限られると著者は書いています。
  • 追跡は12か月です。

書誌情報

原題Instantaneous Wave-free Ratio versus Fractional Flow Reserve to Guide PCI
著者Götberg M, Christiansen EH, Gudmundsdottir IJ, Sandhall L, Danielewicz M, Jakobsen L, Olsson SE, Öhagen P, Olsson H, Omerovic E, Calais F, Lindroos P, Maeng M, Tödt T, Venetsanos D, James SK, Kåregren A, Nilsson M, Carlsson J, Hauer D, Jensen J, Karlsson AC, Panayi G, Erlinge D, Fröbert O, iFR-SWEDEHEART Investigators.
掲載誌The New England Journal of Medicine(2017)
DOI10.1056/NEJMoa1616540
PMID28317438

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