ヒト冠動脈で内皮せん断応力から6か月後のプラーク進展を予測できるか — IVUS と CFD の連続観察
Effect of endothelial shear stress on the progression of coronary artery disease, vascular remodeling, and in-stent restenosis in humans: in vivo 6-month follow-up study
患者の冠動脈で計算した内皮せん断応力(ESS)の分布から、6か月後にどこでプラークが進むかを予測できるのか。
8例12本の冠動脈を IVUS と造影で3次元に再構成して CFD で ESS を求め、6か月後に同じ部位を再評価しました。自己冠動脈では ESS が低い領域でプラークが厚くなり、血管が外向きに広がって内腔は保たれました。生理的な ESS の領域はほぼ変化がなく、高い ESS の領域は外向きに広がって ESS が正常化しました。ステント内は ESS によらず内膜が厚くなりました。
当社の視点
患者固有の冠動脈形状から計算した ESS が、その後の血管壁の変化と対応するかを、同じ人の同じ部位で追った最初の研究です。計算条件は定常流・剛体壁・ニュートン流体と簡素で、流量は造影剤が区間を通過するフレーム数から求めています。著者は、平均流量で定常計算した ESS が拍動計算の時間平均 ESS とほぼ一致することを先行研究で確かめたとしています。8例という小規模な予備研究であり、ステント内の再狭窄に ESS が関わる程度は限られるという結果も含めて、計算した壁面せん断応力の使い道を見極める材料になります。
扱う範囲
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01
形状の再構成
IVUS を 0.5 mm/秒で引き抜きながら拡張末期のフレームで内腔と外弾性板を抽出し、2方向の造影から求めたカテーテルの3次元の軌跡に並べて冠動脈を再構成しました。
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02
流量と計算条件
大きな側枝のない区間の体積を、造影剤の先端が区間を通過するフレーム数で割って流量を求めました。剛体壁・ニュートン流体・定常流で解き、粘度は実測のヘマトクリットから決めています。
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03
ESS の区分
内腔面を平均約5900の小区画(250×300 μm)に分け、似た ESS の区画を領域にまとめ、ESS の累積百分位で6区分にしました。最下位の区分は 0.91 Pa 未満(9.1 dyn/cm² 未満)です。
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04
自己冠動脈の6か月後
低い ESS の領域ではプラークが厚くなり外弾性板の半径が広がり、内腔の半径は変わらず ESS は上がりました。高い ESS の領域では内腔と外弾性板がともに広がり ESS が下がりました。
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05
ステント留置部の6か月後
ESS の区分によらず内膜中膜が厚くなり内腔が狭まり ESS が上がりました。ステント内再狭窄に ESS が関わる程度は限られると著者は考察しています。
Stone 2003 の主な条件と結果
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 対象 | 8例・12本 | 自己冠動脈6本・ステント留置6本 |
| 低い ESS の区分 | < 0.91 Pa | 9.1 dyn/cm² 未満(下位10%) |
| 高い ESS の区分 | > 2.7 Pa | 27 dyn/cm² 超(上位10%以上) |
| 自己冠動脈の領域 | 82領域 | 平均 24 mm² |
| 再現性(ESS) | r = 0.91 | 内腔半径0.96・プラーク厚0.94 |
いずれもこの論文が報告した値です。
実務チェック
- 冠動脈の ESS を計算するときは、定常か拍動か、壁を剛体としたか、流量を何から求めたかを記録します。
- ESS の区分を百分位で決めた研究と絶対値で決めた研究を混同せず、どちらの基準かを明記します。
- 連続観察で部位を対応させるときは、側枝や IVUS の目印で同じ領域を照合した手順を残します。
この研究が扱わない範囲
- 8例の予備研究で、降圧薬2剤の比較試験の一部として行われました。
- 定常流の仮定のため、拍動に伴う現象と壁のコンプライアンスの影響は含みません。
- 臨床事象との関係は扱っていません。
書誌情報
| 原題 | Effect of endothelial shear stress on the progression of coronary artery disease, vascular remodeling, and in-stent restenosis in humans: in vivo 6-month follow-up study |
|---|---|
| 著者 | Stone PH, Coskun AU, Kinlay S, Clark ME, Sonka M, Wahle A, Ilegbusi OJ, Yeghiazarians Y, Popma JJ, Orav J, Kuntz RE, Feldman CL. |
| 掲載誌 | Circulation(2003) |
| DOI | 10.1161/01.CIR.0000080882.35274.AD |
| PMID | 12860915 |