WSS・OSI と壁面近傍の指標

壁面せん断応力とその派生指標。値の絶対値よりも、算出条件を揃えることが比較の前提になります。

壁面せん断応力(WSS: Wall Shear Stress)は、血流が血管壁を擦る力の大きさを表す量です。内皮細胞の応答や動脈硬化の局在と関連づけて論じられてきた指標で、そこから派生する OSI(振動せん断指数)、TAWSS(時間平均 WSS)、RRT(相対滞留時間)も広く使われています。

絶対値の比較が難しい理由

WSS は壁面での速度勾配から求めるため、壁の位置をどこに置くかとその近傍の速度をどう補間するかに強く依存します。

したがって、文献に載っている数値と自分の解析結果を直接比べるのは、多くの場合そのままでは成立しません。

実務での使い方

同一プロトコル内での相対比較、あるいは同一症例の経時変化として使うのが現実的です。群間比較を行う場合は、全例で撮像条件と解析条件を揃えたうえで、条件を論文中に明記します。

解析条件が結果に与える影響の大きさは、同一データを複数グループが解析した比較研究から把握できます。値が合わないこと自体は珍しくありません。

このトピックの文献(40 件)

Pulmonary Circulation 2026 解析実務に直答 研究の着想

肺高血圧、肺動脈3枝平均の最大 WSS 0.3 Pa 未満で判別 別の群で感度90%・特異度100%

肺高血圧の検出と血行動態の評価に用いる非侵襲の指標としての 4D Flow 由来の壁せん断応力

主肺動脈と左右肺動脈の3断面で収縮期の最大 WSS を測り、3断面の平均をとる方法が最も強く平均肺動脈圧(r = −0.75)と肺血管抵抗(r = −0.76)に相関しました。この平均値 0.3 Pa 未満を肺高血圧の判別に使うと、別に集めた群で感度90%・特異度100%でした。閾値は1.5 T の1施設・1種類のシーケンスでの値で、他施設へそのまま持ち込めません。

Bioengineering (Basel) 2026 解析実務に直答 技術動向

吻合角度による WSS の差、分流比をそろえると大半が縮小 最小 WSS の角度差92%→16%

形状から分流比へ — 微小血管の血行力学を解釈するための物理モデルの枠組み

出口の圧力をそろえて計算すると、形状を変えるたびに分枝へ流れる流量の割合(分流比)も変わり、WSS の差には形状の効果と分流比の効果が重なって出ます。この2次元模型では、角度30°から120°で分流比が0.356から0.151に変わり、受血側の最小 WSS の角度による幅は平均の92.1%でした。分流比を約0.25にそろえると幅は16.1%に縮みました。形状の比較では、分流比を報告し、そろえた条件でも結論が残るかを確かめる必要があります。

Life (Basel) 2026 研究の着想 解析実務に直答

腹部大動脈瘤の拡大速度、壁せん断応力・OSI とは相関せず 回転流の向きと関連した32例

腹部大動脈瘤の進行予測 — FDG による大動脈壁の集積と血流の役割

腹部大動脈瘤32例を PET/MRI で撮像し、平均2年追跡した研究では、時間平均壁せん断応力(TAWSS)・OSI・相対滞留時間はいずれも瘤の拡大速度と相関しませんでした。拡大速度と関連したのは回転流の指標で、渦度は単変量で相関し(rs=0.453)、径で補正するとヘリシティ密度が残りました。ヘリシティ密度が負(反時計回り)の瘤は正の瘤より速く拡大しています。ただし著者自身が探索的な結果と位置づけており、壁せん断応力を外して回転流を主指標にする根拠としてはまだ足りません。

European Heart Journal. Imaging Methods and Practice 2026 解析実務に直答 研究の着想

単心室の上大静脈、壁せん断応力は二心室の7割 年齢・体格で補正しても差が残る

単心室循環における大静脈の血流と壁せん断応力の変化 — フェルモキシトール造影 4D Flow MRI による検討

18歳以下の387例(単心室126例、二心室261例)を同じ造影 4D Flow の手順で測った研究です。体表面積あたりの上大静脈の流量は単心室で 1.11 L/min/m²、二心室で 1.50 L/min/m²、上大静脈の壁せん断応力は 16.0 cPa と 22.7 cPa で、単心室が低くなりました。上大静脈が大静脈還流に占める割合は年齢と体表面積が大きいほど下がり、年齢・体表面積・全身麻酔で補正したあとも単心室で低いままでした。壁せん断応力は解析ソフト固有の算出方式による数値で、他のソフトや CFD の数値とは絶対値で比べられません。

Quantitative Imaging in Medicine and Surgery 2026 解析実務に直答 研究の着想

エコー由来の頸動脈 WSS、対照 1.30 Pa が肥厚群で 0.65 Pa 妊婦347人

妊娠高血圧における頸動脈リモデリング — RF 信号による血管硬度解析とベクトルフローイメージングでの特徴づけ

Mindray Resona R9S で妊婦347人の右総頸動脈を測った研究です。平均の壁せん断応力は、正常血圧の対照で 1.30±0.38 Pa、妊娠高血圧で内中膜厚が正常な群で 0.89±0.32 Pa、内中膜が肥厚した群で 0.65±0.27 Pa と段階的に下がりました。ただし内中膜の肥厚を判別する力は血管硬度の指標のほうが高く、壁せん断応力は補完的な位置づけです。算出方法と「平均」の定義は本文に書かれていないため、他の装置や MRI、CFD の値と絶対値で比べることはできません。

Quantitative Imaging in Medicine and Surgery 2026 解析実務に直答 研究の着想

動脈瘤の壁造影部、収縮期の局所圧が 35 Pa 低く 造影の閾値を下げると差は消失

前交通動脈瘤の壁造影を左右する血行力学因子としての局所圧 — 面要素単位の CFD と血管壁 MRI の解析

前交通動脈瘤25個(24例)で、CFD と 3T の血管壁 MRI を瘤表面の面要素ごとに重ねた研究です。同じ瘤の中で比べると、造影部は収縮期ピークの局所圧が平均 35.25 Pa、ピークの壁せん断応力が 3.97 Pa 低く、多変量の解析では局所圧が最も強い因子として残りました。ただし瘤の造影の有無を扱う解析での有意性は境界上(p = 0.0499)で、造影の閾値を下げると圧の差は消えます。局所圧も並べて見る価値を示す仮説段階の報告と読むのが妥当です。

JACC: Cardiovascular Imaging 2019 解析実務に直答 技術動向

急性冠症候群の前の CT、狭窄・プラーク性状に血流指標を加えると責任病変の識別が向上 最有力は病変前後の FFR 差

急性冠症候群の前に撮られた冠動脈 CT の血流指標で、責任病変を見分けられるか — EMERALD 研究

急性冠症候群の1か月〜2年前に CT を撮っていた72例の216病変で、責任病変は非責任病変より CT-FFR が低く、病変前後の CT-FFR の差(ΔFFRCT)、WSS、軸方向のプラーク応力が高い値でした。狭窄度・病変長・プラーク性状のモデルに血流指標を加えると識別能が上がり(c 指数0.747→0.789)、単独で最も情報量が多かったのは ΔFFRCT でした。

European Heart Journal 2019 解析実務に直答 技術動向

冠動脈 WSS の計算手順を29名が推奨 入口は冠動脈口から、格子は収束3%以内、MRI は形状に不適

ヒト冠動脈の壁面せん断応力の評価に関する専門家推奨 — 再構成・境界条件・格子・臨床応用

冠動脈口から関心領域までを再構成し、関心領域の直前の分岐を含めます。格子は細分化で WSS の変化が3%以内になるまで収束を確かめ、血液は剪断減粘性の模型で扱うよう推奨しています。プラークの進展を調べるなら IVUS と造影または CT の融合、被膜の微細構造やステントなら OCT の融合を勧め、MRI は冠動脈の形状に精度が足りないとしています。

Journal of the American College of Cardiology 2018 解析実務に直答 技術動向

病変近位部の WSS が 4.71 Pa を超えると3年の心筋梗塞が増加 FFR に上乗せの予測情報

FFR 陽性の安定冠動脈疾患で、病変近位部の高い WSS は心筋梗塞を予測するか — FAME 2 の事後解析

FAME 2 の薬物治療群441例のうち3年以内に責任血管の心筋梗塞を起こした29例と、背景を揃えた対照29例を比べると、病変近位1/3の WSS が 3 Pa 上がるごとに心筋梗塞のハザードが23%増えました。最適な閾値は 4.71 Pa で、FFR の予測モデルに加えると再分類が改善しました。病変の上流・中部・遠位・下流の WSS や、低い WSS は心筋梗塞と関連しませんでした。

Heart and Vessels 2016 研究の着想 技術動向

静脈グラフトの中枢吻合、上行大動脈に直角で最短経路なら OSI 0.46→0.04

冠動脈バイパスの中枢側吻合の向きがグラフト内の血流に与える影響 — 理想化模型による CFD

理想化模型で比べると、大動脈の長軸に直角で最短経路をとる吻合は、長軸に平行で心尖部へ向ける吻合より、グラフトが3.6 cm 短く血流が5%多くなりました。平行な吻合では収縮早期に吻合部で流れの剥離が起き、最小 WSS 0.53 Pa・OSI 0.46 でしたが、直角な吻合では剥離がなく 4.09 Pa・0.04 でした。

Circulation 2012 解析実務に直答 技術動向

大きなプラークに低い内皮せん断応力が重なると1年で41%に PCI どちらも無ければ92%が進行せず

内皮せん断応力とプラーク量で冠動脈病変の進行を予測できるか — 日本の506例による PREDICTION 研究

日本の17施設506例の3枝を IVUS と造影で再構成して ESS を求め、374例を6〜10か月後に再評価しました。内腔面積の減少は大きなプラーク量と低い ESS がそれぞれ独立に予測しました。両者を併せ持つ狭窄が1年以内に PCI を要した割合は41%、どちらも無ければ92%が進行しませんでした。ただし両者を併せ持つ患者は6%で、症状のある臨床事象は少なく統計的に扱えませんでした。

Circulation 2011 技術動向 研究の着想

低 WSS の部位はプラーク増大、高 WSS の部位は壊死性コアと石灰化が増え線維成分が減少

冠動脈の WSS はプラークの進展と組成の変化に関わるか — 低 WSS と高 WSS の6か月の追跡

20例の左前下行枝で、WSS を低(1.0 Pa 未満)・中(1.0〜2.5 Pa)・高(2.5 Pa 超)に分けて6か月追跡すると、低 WSS の区間はプラーク面積と壊死性コアが増え、血管が内向きに縮む傾向でした。高 WSS の区間はプラーク面積は増えず、壊死性コアと高密度石灰が増え、線維・線維脂肪成分が減り、血管が外向きに過剰に広がる傾向でした。破綻しやすい組成への変化を示唆する結果です。

Atherosclerosis 2010 技術動向

右冠動脈の計算で側枝を省くと WSS の中央値が 2.54 Pa→4.37 Pa に過大評価 局所差は最大 12 Pa

冠動脈の流れの計算で側枝を省くと WSS はどれだけ変わるか — 右冠動脈17例の比較

右冠動脈17例を側枝ありと側枝なしで解き比べると、側枝なしでは主幹の流量が側枝の分だけ減らないため、WSS の中央値が 2.54 Pa から 4.37 Pa に上がり、同じ点の差は最大 12.0 Pa に達しました。差は分岐部だけでなく狭窄部と強い湾曲部にも及びました。一方、定常計算と拍動計算の時間平均 WSS の差は平均7%未満で、分布の相関は0.97を超えました。

Journal of the American College of Cardiology 2008 技術動向 研究の着想

破裂したプラーク20例、局所的に高い壁面せん断応力の位置と破裂部位が一致(κ=0.79)

冠動脈プラークの破裂部位と局所的に高い壁面せん断応力の一致 — 3次元 IVUS と CFD による解析

急性冠症候群で明瞭な潰瘍のある20病変を3次元 IVUS で再構成し、破裂前の形を外挿して CFD で解くと、すべての破裂がプラークの近位側か頂部にあり、局所的に高い壁面せん断応力の位置と破裂の位置がよく一致しました(κ=0.79)。圧力の局所的な上昇は2病変だけでした。

Journal of the American College of Cardiology 2007 解析実務に直答 技術動向

低い内皮せん断応力と過剰な外向きリモデリングの悪循環 破裂しやすいプラークの成り立ち

冠動脈硬化の自然歴と血管リモデリングにおける内皮せん断応力の役割 — 分子・細胞・血管の総説

分岐部や湾曲の内側など、時間平均の内皮せん断応力(ESS)が低い部位で内皮が動脈硬化を起こしやすい性質に変わり、初期プラークができます。その後、血管が外向きに広がって ESS が正常に戻れば安定したプラークに、過剰に広がって低い ESS が続けば、炎症と基質の分解が進んで破裂しやすい薄い線維性被膜のプラークに育つという枠組みです。

Annals of Biomedical Engineering 2003 研究の着想

ステントのストラット周囲に低 WSS の淀み、最大充血時の最小 WSS は留置で77%低下

ステント留置で冠動脈の壁面せん断応力はどう変わるか — スロット管ステントの3次元 CFD

イヌの左前下行枝の実測流速と内径から、スロット管ステント(16 mm、ストラット突出 0.1 mm)を入れた3次元模型を作って定常流で解くと、ストラットの前後に低 WSS の淀みができ、ステントの出口側で低 WSS の範囲が広がりました。アデノシンで血流を増やした条件では、最小 WSS がステントのない血管より出口で77%、ステント内で66〜82%低くなりました。

Circulation 2003 技術動向 研究の着想

ヒト冠動脈で初の連続観察、低い内皮せん断応力の部位でプラークが厚くなり血管が外向きに拡大

ヒト冠動脈で内皮せん断応力から6か月後のプラーク進展を予測できるか — IVUS と CFD の連続観察

8例12本の冠動脈を IVUS と造影で3次元に再構成して CFD で ESS を求め、6か月後に同じ部位を再評価しました。自己冠動脈では ESS が低い領域でプラークが厚くなり、血管が外向きに広がって内腔は保たれました。生理的な ESS の領域はほぼ変化がなく、高い ESS の領域は外向きに広がって ESS が正常化しました。ステント内は ESS によらず内膜が厚くなりました。

Diagnostics (Basel) 2026 解析実務に直答 技術動向

頸動脈のベクトル流速、42件中 WSS が25件 事前に閾値を決めた研究はゼロ

頸動脈狭窄の評価におけるベクトルフローイメージング — 俯瞰調査

2026年4月末までの文献を集めた俯瞰調査です。結果を集計できた42件のうち、壁せん断応力が25件、速度ベクトルが14件、乱流の指標が11件、振動せん断指数が8件を占めます。一方で診断能を報告したのは8件、閾値を事前に決めていた研究はなく、盲検化を明記したのは2件でした。著者は臨床的有用性は確立していないと述べています。

Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2026 解析実務に直答 技術動向

弓部手術の脳梗塞、見た目の評価では当たらず 上行のアテローム量で AUC 0.79

弓部大動脈手術における術後脳梗塞の術前リスク層別化 — アテローム量の定量評価と数値流体解析

国内単施設の72例を後ろ向きに調べた報告です。CT の断面から積み上げた上行大動脈のアテローム量は、術後に脳梗塞を起こした8例で有意に高く、曲線下面積 0.79、カットオフ 352.3 で感度 87.5%・特異度 82.8% でした。一方、壁の性状を目視で判定する定性的な評価は術後脳梗塞と関連しませんでした。

Frontiers in Surgery 2026 解析実務に直答 研究の着想

狭窄度だけでは進行を当てられず AUC 0.552 血行力学量を足すと 0.814

無症候性の中等度頸動脈狭窄のリスク層別化 — 局所の流れと全身の臨床像を組み合わせる

無症候性の頸動脈146枝を最長3年追跡し、狭窄が絶対 10% 超進んだかどうかを予測する機械学習モデルを組んだ研究です。狭窄度だけでは AUC 0.552、臨床危険因子だけでは 0.459 と偶然と変わらず、CFD 由来の血行力学量13項目を足したときだけ 0.814 になりました。最も効いたのは低 TAWSS 領域が内腔表面に占める割合です。

Frontiers in Cardiovascular Medicine 2026 解析実務に直答 研究の着想

EVAR 後のエンドリーク、TAWSS には差なし エネルギー損失は左腸骨枝で2.1倍

エネルギー損失の成分分解による EVAR 後 I 型エンドリークの評価 — 予備的な実行可能性研究

腹部大動脈瘤に EVAR を行った8例(I 型エンドリークあり4例・なし4例)を比べた研究です。壁面平均の時間平均せん断応力には群間差が出ず、エネルギー損失を平均流成分と乱流成分に分けて部位別に積算したときだけ差が出ました。左腸骨枝の乱流成分は 828 対 399(単位 10⁻⁶ W)です。ただし各群4例で、著者自身が仮説を立てる段階だと述べています。

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2009 研究の着想 解析実務に直答

Y字グラフト12mmで運動時の効率低下を38%改善 上大静脈圧は最大5mmHg低下

Y字型 extracardiac Fontan グラフトの CFD 評価

良くなります。断面積を保つ12mm分枝の Y 字グラフトは、安静時も運動時も従来の T 字接続とオフセット型より効率が高く、安静から運動への効率低下を38%改善しました。上大静脈圧は運動時に最大5mmHg下がり、下大静脈血流も左右肺へより均等に配分されました。

Journal of Biomechanical Engineering 2026 解析実務に直答 技術動向

WSS の絶対値を左右する最大要因は血液粘度 入力のばらつきで 0.47〜1.33 Pa の幅

冠動脈 CFD に不確かさ定量を組み込む — 入力のばらつきは WSS のどこに効くか

定常流の患者個別冠動脈モデルで、粘度・速度・圧・密度のばらつきを確率分布として与えて伝播させると、WSS の空間中央値は 0.47〜1.33 Pa の幅で動きました。寄与は粘度が約 0.59、速度が約 0.40 で、この2つでほぼ全部。密度と圧はほぼ効きません。一方で高低の空間分布そのものは保たれました。絶対値の比較には慎重に、分布の比較には自信を持てる、ということです。

Biomechanics and Modeling in Mechanobiology 2026 解析実務に直答 技術動向

頸動脈分岐は剛体壁 CFD で十分 FSI との面積差は中央値 4.1%

壁の伸展性は頸動脈分岐の局所血行動態をどこまで変えるか — FSI と剛体壁 CFD の対比較

健常形態の頸動脈分岐10例で二方向連成 FSI と剛体壁 CFD を対で比較したところ、低 TAWSS・高 OSI・高 TSVI にさらされる面積の差は中央値で 4.1%・1.4%・2.3%、分布の重なりを表す類似度指数は 0.83・0.79・0.68 でした。臨床的に意味のある血行動態の特徴は剛体壁 CFD で捉えられます。FSI が要るのは壁応力そのものを見たいときです。

Journal of the American Heart Association 2024 解析実務に直答 技術動向

CT 由来 WSS、心筋梗塞の予測で狭窄度を上回る ただし無作為化試験はいまだなし

冠動脈の乱れた血流と WSS の計算評価 — 現状の総説

WSS の閾値は 1 Pa 未満を低、1〜7 Pa を正常〜高、7 Pa 超を高とする合意枠組みが示されています。EMERALD では CT 由来 WSS が狭窄度や高リスクプラーク所見より心筋梗塞をよく予測しました。ただし CFD の臨床効果を検証した無作為化試験はなく、計算コストと自動化が障壁として残ります。

BioMedical Engineering OnLine 2021 解析実務に直答 技術動向

条件を完全に揃えても CFD の WSS は MRI の3.7倍 原因は乱流モデルでなく壁際の分解能

大動脈縮窄の乱流と WSS — MRI と CFD はなぜ桁で違うのか

分解能。ファントムで条件を完全に揃えても、CFD の平均 WSS は MRI の3.7倍、狭窄部のピークは8.3倍でした。CFD 側を MRI と同じ分解能に落とすと差が縮むことから、原因は MRI が壁近傍を解像できないことにあります。正規化した WSS 分布なら両者はよく一致します。

Magnetic Resonance in Medical Sciences 2020 解析実務に直答

腹部大動脈の拡張部、WSS は3分の1で OSI は2倍 4D Flow による実測値

腹部大動脈拡張部では低 WSS・高 OSI になる — 4D Flow による実測値

収縮中期で WSS は拡張部 0.20 Pa 対 非拡張部 0.68 Pa(p<0.0001)、OSI は 0.093 対 0.041(p=0.013)。WSS は3分の1以下に下がり OSI は2倍以上に上がります。径比との相関は WSS 振幅のほうが強い(r=−0.694)。

Heart and Vessels 2017 解析実務に直答 技術動向

CFD の WSS、MRI の3〜5倍 一致するのは分布のみ、絶対値は合わず

4D Flow MRI による大動脈弓 CFD の妥当性検証 — CFD と MRI はどこでどれだけ食い違うか

流れの分布は一致するが、絶対値は一致しません。WSS は CFD が MRI の3〜5倍、エネルギー損失は2〜5倍。頸部分枝のような細い血管では MRI 側が流量を50〜60%過小評価します。乱流モデルは RNG k-ε が最も MRI と相関しました。

Scientific Reports 2017 解析実務に直答

低 WSS と破裂、統合してもオッズ比 2.17 ただし閾値 2.0 Pa で有意性は消失

WSS と動脈瘤破裂の関連 — 22研究1257例のメタ解析

22研究1257例を統合すると、低 WSS(0〜1.5 Pa)と破裂の関連はオッズ比 2.17(95% CI 1.73–2.62)で残ります。平均 WSS は破裂群 0.64 Pa、非破裂群 1.4 Pa(p=0.037)。ただし OSI は統合しても有意にならず、異質性と出版バイアスも検出されています。

AJNR American Journal of Neuroradiology 2015 解析実務に直答 研究の着想

同一形状でも破裂部位の予測は6箇所に分散 26グループ、原因は境界条件

CFD Rupture Challenge 2013 Phase I — 26グループは同じ形状から同じ答えを出せたか

26グループが同一の2症例を盲検で解析。破裂側の判定は21/26が正解したが、破裂部位の予測は6箇所に散って一致しませんでした。ばらつきの主因は解析手法ではなく境界条件で、条件を指定した Phase II ではほぼ同一の流れ場が得られています。

Journal of the American College of Cardiology 2015 研究の着想 解析実務に直答

高 WSS 領域で大動脈壁のエラスチン減少 同一患者の高 WSS 部と正常部を対で採取

二尖弁大動脈症は弁由来の血流が作る — WSS マッピングと壁組織の対応

同一患者の高 WSS 領域と正常 WSS 領域から採った壁組織を比べると、高 WSS 側でエラスチンが減り(36.6% 対 49.1%)、線維が細く(2.72 対 3.25 µm)、線維間距離が広がっていました。TGFβ-1 と MMP-1/3、TIMP-1 の発現も高いです。

AJNR American Journal of Neuroradiology 2014 解析実務に直答 研究の着想

瘤を壊すのは高 WSS と低 WSS の両方 文献が真っ二つに割れる理由

高 WSS か低 WSS か — 動脈瘤の文献が割れる理由を説明する統一仮説

どちらも起きている、というのがこの論文の主張。低 WSS と高 OSI は炎症細胞を介した経路で大きく厚い壁の瘤を、高 WSS と正の WSS 勾配は壁細胞を介した経路で小さく薄い壁の瘤を作ります。集めた症例がどちらの表現型に偏るかで、研究の結論が入れ替わります。

Magnetic Resonance in Medicine 2014 解析実務に直答

拡張に狭窄が重なると大動脈のエネルギー損失6倍 うち71%は上行大動脈で発生

異常な大動脈血流における粘性エネルギー損失

胸部大動脈で健常 2.3 mW に対し、拡張のみ 3.6 mW、拡張+狭窄 14.3 mW と約6倍に増えました。損失の71%は上行大動脈で生じます。圧較差との相関は r²=0.91 と強いが、狭窄がある群では大動脈径との相関は消える(r²=0.14)。

Cardiovascular Research 2013 解析実務に直答 技術動向

低ずり説、通説ほど強固でなし 点対点で比較した5編は相関を検出できず

低ずり・振動ずりは動脈硬化の好発部位を説明するか — 27編の系統的レビュー

406編から選んだ27編を精査した結果、著者は「通説ほど強固ではない」と結論しています。支持する報告は多数派だが、点対点で比較した5編は有意な関係を見いだしていません。周方向平均などのデータ処理の仕方、閾値の取り方、病変の評価法が結論を左右しています。

AJNR American Journal of Neuroradiology 2011 解析実務に直答 研究の着想

破裂瘤の特徴は速い流れの集中 210瘤の解析、低 WSS 領域の広さに差なし

破裂・未破裂脳動脈瘤の血行力学環境 — 210瘤・1050回の解析

128例210瘤で1050回の解析を行い、破裂群は流入の集中(ICI 1.012 対 0.66)と最大 WSS の高さ(384 対 277 dyne/cm²)で有意差を示しました。一方、低 WSS 領域の広さと低ずり指数には差がありませんでした。停滞ではなく速い流れの集中の側が破裂と相関しています。

Physiological Reviews 2011 技術動向 研究の着想

動脈 10〜70、病変好発部 0.5 dyn/cm² 内皮のスイッチが切り替わる境目

擾乱流が血管内皮に与える影響 — WSS 指標の生物学的な裏づけ

生体で報告された動脈の生理的な WSS は 10〜70 dyn/cm²、維持水準はおよそ 15〜20 dyn/cm²。内皮細胞に擾乱流を与える in vitro の条件は平均 0.5 dyn/cm² 前後で ±4 dyn/cm² 程度に振れる設定です。この桁の違いが KLF-2・eNOS 系と NF-κB 系のどちらを優位にするかを決めます。

Journal of Magnetic Resonance Imaging 2025 解析実務に直答 研究の着想

頸動脈狭窄で TKE は1.5倍 ただし狭窄率との相関は r=0.31 と弱く

Multi-VENC 4D Flow による頸動脈狭窄の TKE 評価

VENC 33/100/300 cm/s の3段構えで撮り、TKE は狭窄群 391.5 µJ 対 非狭窄群 254.4 µJ。ただし NASCET 狭窄率との相関は r=0.309 と弱く、内膜中膜厚(r=0.543)やピーク流速(r=0.462)のほうが強いです。狭窄率の代用にはなりません。

Reviews in Cardiovascular Medicine 2025 解析実務に直答 技術動向

大動脈 WSS、施設をまたぐ正常値なし 装置・磁場強度・後処理ソフトで変動

大動脈疾患における 4D Flow 由来 WSS — 正常値がまだ定まっていない

ない。この総説は疾患ごとの WSS 値も正常範囲も示していません。理由は標準化されていないからで、装置メーカー間、1.5T と 3.0T の間、そして後処理ソフト間で値が有意に違います。使えるのは同一条件内での高低の比較に限られます。

Magnetic Resonance in Medical Sciences 2022 解析実務に直答 技術動向

4D Flow のエネルギー損失、最大80%の過小評価 空間微分を含む指標は分解能に弱く

4D Flow MRI の血行力学パラメータ — 数式の定義と、分解能に効くもの効かないもの

空間微分を含む指標(渦度、ヘリシティ、エネルギー損失)は分解能に弱く、4D Flow では EL が最大で約80%過小評価されます。TKE は空間微分を使わないため微分量より有利ですが、時空間の平均化や層流の速度勾配がボクセル内分散に混入するため、分解能の影響を免れるわけではありません。指標の選択は装置の分解能から逆算できます。

Cardiovascular Engineering and Technology 2018 解析実務に直答 技術動向

同じ画像、26チーム WSS のばらつき48%、母血管で正規化すれば18%

2015 International Aneurysm CFD Challenge — 画像だけ渡すと WSS はどれだけ割れるか

26チームに DICOM 画像だけを渡した結果、瘤内平均 WSS のばらつきは変動係数48%(症例によっては60%)。ところが母血管の WSS で正規化すると18%まで下がります。ばらつきの主因は形状抽出と流入条件で、経験年数は有意な予測因子ではありませんでした。

最終更新 2026-09-03