4D Flow MRI による大動脈弓 CFD の妥当性検証 — CFD と MRI はどこでどれだけ食い違うか
Validation of numerical simulation methods in aortic arch using 4D Flow MRI
同じ症例を CFD と 4D Flow MRI で解いたとき、どこが一致してどこが食い違うのか。
流れの分布は一致するが、絶対値は一致しない。WSS は CFD が MRI の3〜5倍、エネルギー損失は2〜5倍。頸部分枝のような細い血管では MRI 側が流量を50〜60%過小評価する。乱流モデルは RNG k-ε が最も MRI と相関した。
当社の視点
「CFD と MRI で値が違う」という相談に対して、食い違いの向きと大きさを数字で示せる一報です。当社が受ける問い合わせの多くはこの一点に集約されます。重要なのは、分布パターンは一致するのに絶対値は数倍ずれるという構図で、これは壁近傍の速度勾配を MRI の分解能では解像できないことに起因します。したがって MRI 由来 WSS と CFD 由来 WSS を同じ土俵で比較することはできません。同一手法の中での相対比較に寄せるという当社の案内は、この結果を根拠にしています。筆頭著者は当社の宮崎です。
扱う範囲
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01
検証の設計
成人1例と重複大動脈弓の小児1例について、同一形状で 4D Flow MRI と CFD を実施し収縮期ピークで比較した。層流・LES(Smagorinsky–Lilly)・RNG k-ε の3つの乱流モデルを比べている。
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02
速度場の相関
RNG k-ε が最も MRI と相関した。大動脈弓では成人で 0.865/0.795/0.918(AP/RL/SI)、小児で 0.604/0.826/0.873。いずれも p<10⁻⁸。上行大動脈は相関が低く、左室のねじれによるらせん流を CFD が再現できていない。
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03
WSS とエネルギー損失の乖離
平均 WSS は CFD が MRI の3〜5倍。エネルギー損失は渦粘性を含めると CFD が2〜5倍。境界層を考慮しない条件では両者の EL は近づいた。分布パターンは両者でよく似ている。
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04
細い血管での流量
上行大動脈の流量は成人で 3%、小児で 1% の差に収まる一方、頸部分枝では MRI が CFD の約50〜60%しか示さない。血管が細いほど MRI 側が過小評価する。
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05
境界条件の与え方
大動脈弁での流量を 4D Flow MRI で実測し、時間軸にスプライン補間して CFD の入口速度に変換した。入口は平坦な速度分布、出口は末梢からの反射波の圧力条件、壁は剛体。
CFD と MRI の食い違い
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 平均 WSS | CFD が MRI の 3〜5倍 | 分布パターンは類似。成人例での値 |
| エネルギー損失 | CFD が MRI の 2〜5倍 | 渦粘性を含めた場合。境界層を考慮しなければ近づく |
| 上行大動脈の流量差 | 1〜3% | MRI と CFD でよく一致する |
| 頸部分枝の流量 | MRI が 50〜60% 過小 | 細い血管ほど MRI 側が低く出る |
| 速度相関(大動脈弓・成人) | 0.795〜0.918 | RNG k-ε。p < 10⁻⁸ |
| メッシュ | 約108万 / 96万セル | 成人/小児。最外プリズム層 30 µm |
いずれもこの論文が報告した値です。
実務チェック
- MRI 由来 WSS と CFD 由来 WSS を同じ土俵で比較しない。数倍ずれることが分かっている。
- 細い血管の流量を MRI 値で評価しない。頸部分枝では50〜60%低く出た。
- 分布の議論と絶対値の議論を分ける。パターンは一致するが値は一致しない。
- 乱流モデルを明記する。同じ形状でもモデルによって MRI との相関が変わる。
この研究の限界
- 対象は2例のみで、収縮期ピークの1位相だけを比較しています。
- 血管壁を剛体としており、WSS への影響が指摘されています。
- 上行大動脈のらせん流を CFD が再現できていません。左室収縮を考慮した入口条件が必要としています。
- 拡張期は形状抽出ができず、比較の対象外です。
書誌情報
| 原題 | Validation of numerical simulation methods in aortic arch using 4D Flow MRI |
|---|---|
| 著者 | Miyazaki S, Itatani K, Furusawa T, Nishino T, Sugiyama M, Takehara Y, Yasukochi S |
| 掲載誌 | Heart and Vessels(2017) |
| DOI | 10.1007/s00380-017-0979-2 |
| PMID | 28444501 |