合意声明 Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2015 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

4D Flow CMR 合意声明(初版)— 臨床応用と研究段階の線引き

4D flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement

Dyverfeldt P, Bissell M, Barker AJ, Bolger AF, Carlhäll CJ, Ebbers T, Francios CJ, Frydrychowicz A, Geiger J, Giese D, Hope MD, Kilner PJ, Kozerke S, Myerson S, Neubauer S, Wieben O, Markl M

問い

4D Flow の指標のうち、臨床で使えるものと研究段階のものの境界はどこにあるか。

答え

この声明は両者を別々の表に分けている。流量・逆流分画・ピーク流速・Qp/Qs は臨床応用として推奨。WSS・脈波伝播速度・TKE・相対圧・流入コンパートメントは「臨床的妥当性が未確立」の研究段階に置かれた。この線引きの初出であり、以後の文書に引き継がれている。

当社の視点

撮像パラメータは2023年アップデートで更新されているため、現行値はそちらを見てください。この初版を読む価値は別のところにあります。WSS・TKE・相対圧を「研究段階」として臨床応用と切り分けた最初の国際合意がここで、その線引きが2026年の FLIICR 推奨まで引き継がれている点です。当社が扱う指標の多くがこの側にあります。声明が挙げた理由(空間分解能への依存、実際の値との関係が不明、乱流を考慮していない)は、いま顧客と条件を詰めるときの論点そのものです。

扱う範囲

  • 01

    撮像パラメータ

    空間分解能は大動脈・肺動脈で 2.5 mm³ 未満、whole heart で 3.0 mm³ 未満。時間分解能 40 ms 未満。VENC は想定最大流速の10%増し。撮像時間 5〜25分。これらは2023年アップデートで更新されている。

  • 02

    前処理の4補正

    Maxwell(concomitant gradient)補正、渦電流補正(静止組織の位相に多項式を当てる)、位相アンラップ、勾配非線形性補正。渦電流補正の多項式次数と静止組織の判定は装置・シーケンス依存。

  • 03

    品質管理の3段階

    源画像の目視確認 → 質量保存則を使った定量的整合性チェック(肺循環と体循環の比、左室の流入出)→ 問題があれば再度の目視。パスラインは出入りの本数が一致するかで検証する。

  • 04

    臨床応用として推奨されたもの

    弁膜症(流量・逆流分画・ピーク流速・圧較差)、シャントと側副血行(流量・シャント率・Qp/Qs)、複雑先天性心疾患(血流分布・接続・ピーク流速)、大動脈疾患(流量・逆流分画・偽腔の流れ)。

  • 05

    研究段階に置かれたもの

    WSS(空間分解能に依存し実際の値との関係が不明)、脈波伝播速度(アーチファクトに敏感)、TKE(ボクセル内の平均流速変動の影響)、相対圧(乱流を考慮していない)、流入コンパートメント(パスラインの誤差蓄積)。

初版が示した撮像条件(2023年版で更新済み)

項目補足
空間分解能(大動脈・肺動脈) < 2.5 mm³ whole heart は < 3.0 mm³
時間分解能 < 40 ms 2023年版では定量用 30 ms・上限 50 ms に整理された
VENC 想定最大流速 +10% 単一 VENC を前提とした記述
内腔を横切るボクセル数 5〜6個以上 流量を正確に出すための下限
呼吸同期 ナビゲータ 6 mm 窓 採択率およそ50%。ベローズでも同程度
並列イメージング R = 2〜3 k-t 系が使えるなら R = 4〜5
撮像時間 5〜25分 条件により幅がある

いずれもこの2015年版が示した値です。現行の推奨値は2023年アップデートを参照してください。 出典: 4D Flow CMR 合意声明 2023年アップデート — 撮像から品質保証までの現行基準(Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2023)

実務チェック

  • 自分が使っている指標が、臨床応用側と研究段階側のどちらに置かれているかを確認する。
  • 研究段階の指標を使うときは、声明が挙げた不確かさの理由を論文中で扱う。
  • 撮像条件は2023年アップデートの値を使う。この初版の数値を現行値として引かない。
  • 質量保存則による整合性チェックを、症例ごとに1組は通す。

声明自身が挙げた限界

  • 得られるのは平均流速場であり、乱流の微細変動は解像していません。全スケールの解像には 0.1 mm 未満・1 ms 未満が必要で現実的ではないとしています。
  • 速度対雑音比は VENC に反比例するため、高流速と低流速を1回の撮像で両立させることができません。
  • 渦電流由来の背景位相を完全に除去する方法は存在しないと明記されています。
  • 各時相は複数心拍の平均であり、心拍ごとの変動は捉えられません。
  • 2015年時点では主要3社が 4D Flow を標準提供しておらず、再現性が制限されると記されています(現在は状況が異なります)。

書誌情報

原題4D flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement
著者Dyverfeldt P, Bissell M, Barker AJ, Bolger AF, Carlhäll CJ, Ebbers T, Francios CJ, Frydrychowicz A, Geiger J, Giese D, Hope MD, Kilner PJ, Kozerke S, Myerson S, Neubauer S, Wieben O, Markl M
掲載誌Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance(2015)
DOI10.1186/s12968-015-0174-5
PMID26257141

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