推奨文書 Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2026 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

先天性心疾患の 4D Flow 後処理 — SCMR FLIICR ワーキンググループ推奨

4D flow cardiac magnetic resonance postprocessing in congenital heart disease: SCMR FLIICR workgroup recommendations

Garcia J, Geiger J, Christopher A, Meierhofer C, Maskatia S, Raimondi F, Teo L, Uribe S, Sotelo J, Saengsin K, Suwa K, Zhong L, Tandon A, Rutz T.

問い

先天性心疾患の 4D Flow を日常診療に乗せるとき、解析ソフトに何を要求すべきか。

答え

ボトルネックは撮像ではなく後処理。SCMR の14施設が「理想の解析ソフト」の要件を列挙した文書で、ソフト選定とベンダー交渉のチェックリストになる。WSS・渦度・エネルギー損失・圧力マッピングは「ルーチンではない」として対象外。

当社の視点

施設の手順ではなくソフトの要件を定めた文書です。当社にとって重要なのは対象範囲の線引きで、WSS・渦度・運動エネルギー・エネルギー損失・圧力マッピング・ヘリシティは「現時点でルーチンではない」として明確に除外されています。同時に、これらが研究から臨床に移る可能性を認め、新しい解析モジュールを追加できる設計にすべきとも書かれています。ソフト選定の要件表として、また当社製品が置かれている位置を確認する材料として読めます。

扱う範囲

  • 01

    全般

    PACS との安定した連携、DICOM の入出力、2D と 4D で共通の UI。ROI の1点を直すために全体をやり直さずに済む undo。普及のための無償基本版とレポート連携も要件に挙げています。

  • 02

    位相オフセット補正

    渦電流と concomitant gradient の補正は必須で、用いた手法を開示すること。通常は静止組織の補間(線形・多項式)。装置によってはファントムベースの補正が必要。2D と 4D で同じ手法を使うこと。

  • 03

    VENC・折り返し補正

    自動と手動の両方を用意し、折り返し領域をカラーで示す。ピクセル単位と全ボリューム一括の両方に対応し、ROI 設定の前後どちらでも切り替えられること。dual/multi-VENC データにも対応(Fontan で有用)。

  • 04

    セグメンテーション

    大血管だけでなく肺静脈のような小血管も。手動 MPR、中心線再構成は大動脈以外に MPA と左右肺動脈にも。3D レンダリングと MPR は必須。ROI 数に上限を設けない。拍動と面内外の動きに自動追従。ステントや人工物のアーチファクトは後処理では救えないと明記。

  • 05

    弁追従

    房室弁は面外運動が大きく逆流評価を妨げる。半自動の弁追従で精度と信頼性が上がるため、機能として備えるべきとしています。

  • 06

    可視化

    速度 MIP、パスライン、流線、ベクトル。血管起点ごとのパスライン表示。マグニチュード画像を AI で短軸・長軸に再フォーマットし、EDV・ESV から一回拍出量と EF を算出。修正後の Fallot や ccTGA のような非定型形態を想定し、スライス数と厚みを調整できること。

ソフトが出力すべき項目

項目補足
流量 net・順行・逆行 mL/beat と L/min(または L/min/m²)
逆流 逆流分画(%)・逆流量(mL)
併記する条件 5項目 心拍・VENC・最大流速・適用した折り返し補正・オフセット補正量
血管ラベル既定値 12箇所 Asc ao/Desc ao/MPA/LPA/RPA/SVC/IVC・Fontan tunnel/Glenn/左右の上・中・下肺静脈
Qp:Qs 3経路で算出 MPA÷Asc ao、(RPA+LPA)÷Asc ao、肺静脈還流÷(SVC+Desc ao)
体肺比の別指標 (SVC+横隔膜位 Desc ao)÷Asc ao % で表示
肺血流分布 RPA÷LPA、左右肺静脈還流比 いずれも %
エクスポート 表形式テキスト/xml/DICOM ROI 位置と 3D 再構成も保存し、次回検査と同じ位置で比較できるようにする
1検査のデータ量 500 MB〜4 GB whole heart 1回で1万画像を超える。GPU かクラウドが前提

いずれもこの文書が要件として挙げた項目です。

実務チェック

  • 2D と 4D で同じオフセット補正手法が使われているかを確認する。
  • 折り返し補正が自動・手動の両方にあり、ROI 設定の前後どちらでも掛けられるかを確認する。
  • 肺静脈のような小血管のセグメンテーションが実用に耐えるか、導入前に自施設のデータで試す。
  • 房室弁逆流を評価するなら、弁追従を要件に入れる。
  • ROI 位置と 3D 再構成が保存され、次回検査で同じ位置に置けるかを確認する。

この文書が扱わない範囲

  • WSS・渦度・運動エネルギー・エネルギー損失・圧力マッピング・ヘリシティは「現時点でルーチンではない」として対象外。ただし将来の追加を見込んだ設計にすべきとしています。
  • 撮像条件そのものは扱わず、2023年の合意声明に委ねています。
  • 特定のソフトやベンダーを推奨するものではありません。

書誌情報

原題4D flow cardiac magnetic resonance postprocessing in congenital heart disease: SCMR FLIICR workgroup recommendations
著者Garcia J, Geiger J, Christopher A, Meierhofer C, Maskatia S, Raimondi F, Teo L, Uribe S, Sotelo J, Saengsin K, Suwa K, Zhong L, Tandon A, Rutz T.
掲載誌Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance(2026)
DOI10.1016/j.jocmr.2026.102789
PMID42612801

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