Pulmonary Circulation
2026
解析実務に直答
研究の着想
肺高血圧の検出と血行動態の評価に用いる非侵襲の指標としての 4D Flow 由来の壁せん断応力
4D-Flow MRI-Derived Wall Shear Stress as a Non-Invasive Biomarker for the Detection and Hemodynamic Characterization of Pulmonary Hypertension
主肺動脈と左右肺動脈の3断面で収縮期の最大 WSS を測り、3断面の平均をとる方法が最も強く平均肺動脈圧(r = −0.75)と肺血管抵抗(r = −0.76)に相関しました。この平均値 0.3 Pa 未満を肺高血圧の判別に使うと、別に集めた群で感度90%・特異度100%でした。閾値は1.5 T の1施設・1種類のシーケンスでの値で、他施設へそのまま持ち込めません。
肺動脈の WSS を臨床指標として使いたいという相談に、測り方と閾値の両方を示せる文献です。注目点は2つあります。1つは、1断面の値より3断面の平均のほうが侵襲的な計測値とよく相関し、2人の解析者の間の級内相関係数も0.98だった点で、断面の置き方による差を平均で抑える考え方は他の血管にも応用できます。もう1つは、16例で患者固有の CFD を行い、CFD の WSS と平均肺動脈圧の相関(r = −0.63)が 4D Flow の値と同じだった点です。絶対値は分解能で過小評価されると著者自身が書いており、相関の向きと強さは保たれても、閾値の数値は撮像条件と解析ソフトに結びついています。対照の多くが健常ボランティアで、平均肺動脈圧の平均が44 mmHg と進んだ患者が中心のため、判別成績は実臨床より高く出ると著者が明記しています。
Life (Basel)
2026
研究の着想
解析実務に直答
腹部大動脈瘤の進行予測 — FDG による大動脈壁の集積と血流の役割
Predicting Abdominal Aortic Aneurysm Progression: The Role of 18F-Fluorodeoxyglucose Aortic Wall Uptake and Flow Dynamics
腹部大動脈瘤32例を PET/MRI で撮像し、平均2年追跡した研究では、時間平均壁せん断応力(TAWSS)・OSI・相対滞留時間はいずれも瘤の拡大速度と相関しませんでした。拡大速度と関連したのは回転流の指標で、渦度は単変量で相関し(rs=0.453)、径で補正するとヘリシティ密度が残りました。ヘリシティ密度が負(反時計回り)の瘤は正の瘤より速く拡大しています。ただし著者自身が探索的な結果と位置づけており、壁せん断応力を外して回転流を主指標にする根拠としてはまだ足りません。
「腹部大動脈瘤の研究で 4D Flow から何を出せばよいか」という相談で、壁せん断応力と OSI だけを主指標に置く計画に対して、回転流の指標を並べて取るよう勧める根拠になります。読むときの注意が3つあります。1つ目は、流れの指標を収縮期最大の1時相で、28区画の中央値として取っていることです。2つ目は、4D Flow を撮れなかった5例の流れの指標を全体の中央値で補っていることです。32例のうち5例が補完値で、多変量の結果はこの補完に左右されます。3つ目は、ヘリシティの正負がどちら向きから見た回転かが本文に書かれていないことです。ヘリシティは速度の空間微分を含む指標で、分解能の影響も受けます。他の解析で同じ符号の判定をするときは、軸の向きの定義から合わせる必要があります。
European Heart Journal. Imaging Methods and Practice
2026
解析実務に直答
研究の着想
単心室循環における大静脈の血流と壁せん断応力の変化 — フェルモキシトール造影 4D Flow MRI による検討
Altered caval flow and wall shear stress in single ventricle circulation: insights from ferumoxytol-enhanced 4D flow MRI
18歳以下の387例(単心室126例、二心室261例)を同じ造影 4D Flow の手順で測った研究です。体表面積あたりの上大静脈の流量は単心室で 1.11 L/min/m²、二心室で 1.50 L/min/m²、上大静脈の壁せん断応力は 16.0 cPa と 22.7 cPa で、単心室が低くなりました。上大静脈が大静脈還流に占める割合は年齢と体表面積が大きいほど下がり、年齢・体表面積・全身麻酔で補正したあとも単心室で低いままでした。壁せん断応力は解析ソフト固有の算出方式による数値で、他のソフトや CFD の数値とは絶対値で比べられません。
先天性心疾患の相談で多い「Fontan の上大静脈の流量や壁せん断応力を、何と比べて読めばよいか」に、数百例規模の群別の数値で答える材料になります。読み方の要点は2つあります。1つ目は、上大静脈の流量比は成長とともに下がるため、年齢や体表面積が違う患者を並べるだけでは病態の差と成長の差を分けられないことです。著者も、流量比の低下を病状の進行と決めつけず年齢と体格に照らして読むよう書いています。2つ目は、壁せん断応力の絶対値が算出方式に強く依存することです。同じ論文の中でも二心室の上行大動脈で 25.8 cPa、下行大動脈で 100.2 cPa と4倍の開きがあり、当社の解析結果と数値を直接並べる使い方はできません。群間の大小関係と、補正すべき因子の一覧として使うのが妥当です。
Journal of Imaging
2026
解析実務に直答
研究の着想
カテーテルアブレーション後の心房細動における左房内の渦流 — 4D Flow MRI による評価
4D Flow MRI Characterization of Left Atrial Vortical Flow in Atrial Fibrillation Following Catheter Ablation
足りません。発作性心房細動で肺静脈隔離を受ける前の107例、受けた後の56例、対照19例を比べた研究です。時間平均の渦度は隔離前 19.92 s⁻¹ に対して隔離後 24.18 s⁻¹ で、年齢と性別で調整すると対照(28.56 s⁻¹)との差は有意でなくなりました。一方で平均の渦体積は隔離前 12.43 cm³、隔離後 12.33 cm³ とほぼ同じで、どちらも対照の 7.08 cm³ より大きいままでした。2つの指標は別の変化を捉えているため、併記が必要です。
心房の渦を指標にしたいという相談で、渦度と渦体積のどちらを出すかを決める根拠として使える報告です。同じ集団で渦度は治療後に対照との差が消え、渦体積は治療前と変わらないという食い違いが出ています。片方だけを報告すると、治療の効果について逆の印象を与えかねません。渦体積は λ2 法で渦を切り出したうえで体積を数えるため、患者ごとの閾値の決め方と最小体積の条件が値を左右します。この研究では閾値を λ2 の平均の半分とし、75 mm³ 未満の領域を除いています。渦体積を施設間や文献間で比べるときは、この切り出し条件が揃っているかを先に確かめる必要があります。
European Heart Journal - Imaging Methods and Practice
2026
解析実務に直答
研究の着想
妊娠高血圧の母体から生まれた小児の心形態と心内血流
Cardiac morphology and flow dynamics in children born to hypertensive pregnancies
6〜9歳の小児で 4D Flow MRI を撮った93例のうち、品質基準を通って解析に残ったのは67例でした。妊娠高血圧に曝露した群と対照群で、容積、駆出率、ストレインといった通常の指標には差がありませんでした。血流の4成分の容積にも差がなく、差が出たのは拡張末期の滞留流入の運動エネルギー(3.35 対 5.70 μJ/mL)だけです。著者はこれを探索的な所見と位置づけ、別の集団での再現を求めています。
小児の心臓で 4D Flow MRI の研究を計画する相談に、脱落の割合と期待できる効果の大きさを実数で示せる報告です。撮像できた93例のうち26例が画質や処理の問題で除外されており、例数の設計には3割前後の脱落を見込む根拠になります。除外の基準は、1回拍出量が通常のシネ画像の80%未満、流入と流出の差が15%以上、生理的でない流れが25%以上と明記されており、自施設の品質管理の基準を決める参考になります。通常の心機能指標に差がない群で血流の指標にだけ差が出たという結果は研究の着想になりますが、多数の指標を調べたうちの1つで、個人の判別に使える差ではない点を併せて伝える必要があります。
Magnetic Resonance in Medicine
2016
解析実務に直答
狭窄流の圧力損失推定を数値解析で比べる — どの式が真値に近いか
4D Flow MRI-Based Pressure Loss Estimation in Stenotic Flows: Evaluation Using Numerical Simulations
真値 6.76±0.54 mmHg に対し、簡易ベルヌーイは 8.74±0.67 mmHg と過大、拡張ベルヌーイは 6.57±0.53 mmHg で最も近いです。圧ポアソン方程式はほぼゼロになります。TKE は分解能の影響をほとんど受けないが、粘性散逸は過小評価され分解能に依存します。
圧力損失の指標を選ぶときに、最初に見るべき比較表です。CFD で真値が分かる条件を作り、そこに MRI 計測を模擬して各手法を当てているため、手法そのものの優劣を切り分けられます。実務で押さえる点は二つあります。第一に、圧ポアソン方程式は非可逆圧較差をほぼ拾えないことです。第二に、TKE と粘性散逸は形状ごとの相関は強い(r²>0.93)のに、形状をまたぐと落ちる(r²=0.756 と 0.776)ことです。つまり同一症例の経時変化には使えても、症例間の絶対比較には向きません。
Journal of Magnetic Resonance Imaging
2012
解析実務に直答
技術動向
4D Flow MRI — 撮像法の総説
4D flow MRI
大動脈・肺動脈では TR 5〜6 ms、2mm等方、VENC 100〜150 cm/s、並列イメージング R=2、ナビゲータ効率50〜80%で 15〜20分、時間分解能40〜50 ms。撮像時間は分解能・被覆範囲・加速率で決まり、速度ノイズは VENC に比例して SNR に反比例します。
「なぜそんなに時間がかかるのか」を式で説明できる総説です。時間分解能は 4×TR×NSeg、撮像時間は NyNz/NSeg×TECG という形で書かれているため、分解能を上げると何倍かかるかを事前に計算できます。VENC についても、エイリアシングを避けるには高く、ノイズを抑えるには低くという相反があり、広い範囲を1回で撮ると単一の最適 VENC は存在しないと明記されています。撮像条件の相談で前提を揃えるのに使えます。
Magnetic Resonance in Medicine
2011
解析実務に直答
研究の着想
大動脈の 4D 圧差マッピング — ファントム比較と生体への適用
In vivo noninvasive 4D pressure difference mapping in the human aorta: phantom comparison and application in healthy volunteers and patients
大動脈縮窄術後6例で、ドプラ超音波との相関は r=0.96(p<0.05)と高いが、14.7%±15.5% の過小評価が残ります。この値は狭窄の近位と遠位を結ぶ全経路のうち最大の圧差を採った場合のもので、経路の取り方が結果を左右します。
相対圧を臨床値と突き合わせた初期の系統的検証です。実務で重要なのは、相関の高さより経路依存性です。狭窄の近位と遠位を結ぶ経路は無数にあり、そのどれを採るかで値が変わります。この論文は全経路のうち最大値を採る方針を明示し、それでもドプラより約15%低いと報告しました。相対圧を報告するときに経路の決め方を書かなければ再現できない、という実例として引けます。空間2.1 mm³・時間40 ms という当時の条件も、必要な撮像水準の目安になります。
BioMedical Engineering OnLine
2021
解析実務に直答
技術動向
大動脈縮窄の乱流と WSS — MRI と CFD はなぜ桁で違うのか
Assessment of turbulent blood flow and wall shear stress in aortic coarctation using image-based simulations
分解能。ファントムで条件を完全に揃えても、CFD の平均 WSS は MRI の3.7倍、狭窄部のピークは8.3倍でした。CFD 側を MRI と同じ分解能に落とすと差が縮むことから、原因は MRI が壁近傍を解像できないことにあります。正規化した WSS 分布なら両者はよく一致します。
「MRI 由来 WSS と CFD 由来 WSS が合わない」に対する決定的な検証です。ファントムで境界条件・形状・壁の条件をすべて揃えたうえで差が残り、CFD の解像度を MRI に合わせて落とすと差が縮みます。原因が MRI の壁近傍分解能にあることを、消去法で示しています。実務上の結論も明快で、壁近傍の分解能を高く取りたいなら CFD、局所の高低を見るなら MRI で足ります。ただし CFD の値も粘度・境界条件・壁モデル・形状に依存するため、絶対値の基準にはなりません。両者を併用し、正規化した WSS で比較するという著者の推奨は、当社が案内している方針と一致します。
Magnetic Resonance in Medical Sciences
2020
解析実務に直答
腹部大動脈拡張部では低 WSS・高 OSI になる — 4D Flow による実測値
Abnormal Flow Dynamics Result in Low Wall Shear Stress and High Oscillatory Shear Index in Abdominal Aortic Dilatation: Initial in vivo Assessment with 4D-flow MRI
収縮中期で WSS は拡張部 0.20 Pa 対 非拡張部 0.68 Pa(p<0.0001)、OSI は 0.093 対 0.041(p=0.013)。WSS は3分の1以下に下がり OSI は2倍以上に上がります。径比との相関は WSS 振幅のほうが強い(r=−0.694)。
腹部大動脈で WSS と OSI の実測値が対で示された数少ない報告です。値の桁を押さえておくと、自施設の解析結果が妥当な範囲にあるかの一次判定に使えます。同一被験者内で拡張部と上流の非拡張部を比べているため、被験者間のばらつきが入りません。ただし2 mm のパーティション厚では WSS が過小評価されうると著者自身が述べており、絶対値をそのまま他施設と比べることはできません。血液粘度に 0.00384 Pa·s を仮定している点も、比較の前に確認すべき条件です。
Scientific Reports
2019
研究の着想
解析実務に直答
仮想仕事エネルギー法による相対圧推定(νWERP)
Estimation of Cardiovascular Relative Pressure Using Virtual Work-Energy
補助的な仮想場を解いてから仕事エネルギー式を適用する手法。先天性心疾患の思春期患者5例でカテーテル圧との誤差 16±13%(絶対値 1 mmHg 未満)。同じデータで簡易ベルヌーイは100%超、従来の WERP は300%超の誤差でした。
相対圧推定の手法を比較するときの基準になる論文です。実務上の含意は、手法の選択が結果を桁で変えるという点にあります。同一データに対して簡易ベルヌーイが100%超、非定常ベルヌーイが67%、従来の WERP が300%超の誤差を出す中で、この手法だけが20%を切りました。逆に言えば、どの手法で出した相対圧かを書かない報告は比較できません。ただし内腔が3〜4ボクセルを切ると誤差が増え、乱流変動は現時点で扱えないと明記されています。狭窄部への適用には注意が要ります。
Heart and Vessels
2017
解析実務に直答
技術動向
4D Flow MRI による大動脈弓 CFD の妥当性検証 — CFD と MRI はどこでどれだけ食い違うか
Validation of numerical simulation methods in aortic arch using 4D Flow MRI
流れの分布は一致するが、絶対値は一致しません。WSS は CFD が MRI の3〜5倍、エネルギー損失は2〜5倍。頸部分枝のような細い血管では MRI 側が流量を50〜60%過小評価します。乱流モデルは RNG k-ε が最も MRI と相関しました。
「CFD と MRI で値が違う」という相談に対して、食い違いの向きと大きさを数字で示せる一報です。当社が受ける問い合わせの多くはこの一点に集約されます。重要なのは、分布パターンは一致するのに絶対値は数倍ずれるという構図で、これは壁近傍の速度勾配を MRI の分解能では解像できないことに起因します。したがって MRI 由来 WSS と CFD 由来 WSS を同じ土俵で比較することはできません。同一手法の中での相対比較に寄せるという当社の案内は、この結果を根拠にしています。筆頭著者は当社の宮崎です。
Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance
2015
解析実務に直答
技術動向
4D Flow CMR 合意声明(初版)— 臨床応用と研究段階の線引き
4D flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement
この声明は両者を別々の表に分けています。流量・逆流分画・ピーク流速・Qp/Qs は臨床応用として推奨。WSS・脈波伝播速度・TKE・相対圧・流入コンパートメントは「臨床的妥当性が未確立」の研究段階に置かれました。この線引きの初出であり、以後の文書に引き継がれています。
撮像パラメータは2023年アップデートで更新されているため、現行値はそちらを見てください。この初版を読む価値は別のところにあります。WSS・TKE・相対圧を「研究段階」として臨床応用と切り分けた最初の国際合意がここで、その線引きが2026年の FLIICR 推奨まで引き継がれている点です。当社が扱う指標の多くがこの側にあります。声明が挙げた理由(空間分解能への依存、実際の値との関係が不明、乱流を考慮していない)は、いま顧客と条件を詰めるときの論点と重なります。
Journal of the American College of Cardiology
2015
研究の着想
解析実務に直答
二尖弁大動脈症は弁由来の血流が作る — WSS マッピングと壁組織の対応
Valve-Related Hemodynamics Mediate Human Bicuspid Aortopathy: Insights From Wall Shear Stress Mapping
同一患者の高 WSS 領域と正常 WSS 領域から採った壁組織を比べると、高 WSS 側でエラスチンが減り(36.6% 対 49.1%)、線維が細く(2.72 対 3.25 µm)、線維間距離が広がっていました。TGFβ-1 と MMP-1/3、TIMP-1 の発現も高いです。
WSS を画像上の数値ではなく、壁の実体と結びつけた研究です。同じ患者の中で高 WSS 部と正常 WSS 部を対にして採取している点が要で、患者間のばらつきを排除できています。当社にとっての意味は、WSS マッピングが「見た目の指標」ではなく組織学的な裏づけを持つという点にあります。ただし絶対値は示されておらず、対照群の95%信頼区間から外れるかどうかで高低を判定しています。分解能による過小評価は認めつつ、相対的な高低は被験者間で保たれるという立場です。
Magnetic Resonance in Medicine
2014
解析実務に直答
異常な大動脈血流における粘性エネルギー損失
Viscous energy loss in the presence of abnormal aortic flow
胸部大動脈で健常 2.3 mW に対し、拡張のみ 3.6 mW、拡張+狭窄 14.3 mW と約6倍に増えました。損失の71%は上行大動脈で生じます。圧較差との相関は r²=0.91 と強いが、狭窄がある群では大動脈径との相関は消える(r²=0.14)。
エネルギー損失を指標として採用するかを判断する材料です。狭窄があると値が桁で変わるため、群間差は明瞭に出ます。一方で注意すべき点が二つあります。ひとつは、損失の大半が上行大動脈に集中するため、計測範囲の取り方で値が大きく動くことです。もうひとつは、拡張だけの群では大動脈径と相関するのに、狭窄群では相関が消えることです。径だけを見て損失を推測することはできません。観察者間のセグメンテーション差だけで ±1.75 mW、値の7%が動く点も、施設間比較の前提として押さえておく必要があります。
JACC: Cardiovascular Imaging
2013
解析実務に直答
研究の着想
TKE から非可逆圧力損失を推定する — 大動脈弁狭窄
Magnetic resonance measurement of turbulent kinetic energy for the estimation of irreversible pressure loss in aortic stenosis
上行大動脈のピーク総 TKE と圧力損失指数は R²=0.91 で強く相関しました。狭窄患者の TKE は 3〜52 mJ、健常は 3 mJ 未満。TKE は乱流の速度変動が持つ運動エネルギーで、非可逆圧力損失と同じ量ではありません。その散逸を通じて損失に寄与するため、乱流に伴う損失の指標として検討されています。
「4v² で出した圧較差が症状と合わない」という相談に、原理から答えられる一報です。簡易ベルヌーイは最大流速1点だけを使い、狭窄後の圧力回復を数えないため、心室にかかる実際の負荷を過大に評価することがあります。この論文は乱流の速度変動が持つ運動エネルギーを測り、圧力損失指数との回帰式まで示しました。TKE は損失そのものではなく、その散逸を通じて損失に寄与する量である点に注意が要ります。ただし真の基準となる侵襲的圧測定が得られたのは1例のみで、検証の水準はまだ高くありません。指標として採用するかを判断する材料として読むのが妥当です。
Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance
2026
解析実務に直答
技術動向
先天性心疾患の 4D Flow 後処理 — SCMR FLIICR ワーキンググループ推奨
4D flow cardiac magnetic resonance postprocessing in congenital heart disease: SCMR FLIICR workgroup recommendations
ボトルネックは撮像ではなく後処理。SCMR の14施設が「理想の解析ソフト」の要件を列挙した文書で、ソフト選定とベンダー交渉のチェックリストになります。WSS・渦度・エネルギー損失・圧力マッピングは「ルーチンではない」として対象外。
施設の手順ではなくソフトの要件を定めた文書です。当社にとって重要なのは対象範囲の線引きで、WSS・渦度・運動エネルギー・エネルギー損失・圧力マッピング・ヘリシティは「現時点でルーチンではない」として明確に除外されています。同時に、これらが研究から臨床に移る可能性を認め、新しい解析モジュールを追加できる設計にすべきとも書かれています。ソフト選定の要件表として、また当社製品が置かれている位置を確認する材料として読めます。
Journal of Magnetic Resonance Imaging
2025
解析実務に直答
研究の着想
Multi-VENC 4D Flow による頸動脈狭窄の TKE 評価
Quantitative Evaluation of Carotid Artery Stenosis by Multi-VENC 4D Flow MRI: Incorporating Turbulent Kinetic Energy for Clinical Validity
VENC 33/100/300 cm/s の3段構えで撮り、TKE は狭窄群 391.5 µJ 対 非狭窄群 254.4 µJ。ただし NASCET 狭窄率との相関は r=0.309 と弱く、内膜中膜厚(r=0.543)やピーク流速(r=0.462)のほうが強いです。狭窄率の代用にはなりません。
VENC 設定に迷う現場に対して、実際に使われた数値を示せる一報です。33/100/300 cm/s という3段の組み合わせと 1.0 mm³ 等方・撮像約10分という条件は、そのままプロトコル検討の出発点になります。もう一つ重要なのは、TKE と狭窄率の相関が r=0.309 と弱いことです。TKE は狭窄率を置き換えるものではなく、プラークの不安定性(視覚スケールと r=0.392)に寄る指標として位置づけるのが妥当です。単一 VENC との直接比較は示されていないため、多段化の利得は定量化されていません。
Reviews in Cardiovascular Medicine
2025
解析実務に直答
技術動向
大動脈疾患における 4D Flow 由来 WSS — 正常値がまだ定まっていない
The Role of 4D Flow MRI-derived Wall Shear Stress in Aortic Disease: A Comprehensive Review
ない。この総説は疾患ごとの WSS 値も正常範囲も示していません。理由は標準化されていないからで、装置メーカー間、1.5T と 3.0T の間、そして後処理ソフト間で値が有意に違います。使えるのは同一条件内での高低の比較に限られます。
WSS の絶対値を施設間で比較できない理由を、総説の立場から整理した一報です。当社にとって直接関係するのは、後処理ソフトによって WSS の値が有意に違うと明記されている点で、実名で挙げられた6種類の商用プラットフォームには当社の iTFlow も含まれています。つまり「他社ソフトで出した値と合わない」という問い合わせは、解析の誤りではなく、標準化されていない現状の反映です。この総説を引いて、値ではなく高低の分布で議論するよう案内できます。標準化された手順の確立が臨床応用の前提だと結論しています。
Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance
2023
解析実務に直答
4D Flow CMR 合意声明 2023年アップデート — 撮像から品質保証までの現行基準
4D Flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement: 2023 update
空間分解能は成人血管 2 mm³・小児血管 1.5 mm³・新生児 0.75〜1 mm³、時間分解能は定量用 30 ms(上限50 ms)。導入時は健常者・患者10例で 2D 位相コントラストと比較し、流量差5%以内を満たすことです。日常は症例ごとに質量保存を1組確認します。
「何をどう撮ればよいか」の相談に対して、最初に案内する基準文献です。2015年の初版に対し、対象年齢別の分解能、VENC の部位別目安、そして導入時の妥当性確認の手順が具体化されました。当社が実務で最も引くのは品質保証の節で、10例での 2D 比較・5%以内という数値があるため「使える状態かどうか」を施設が自分で判定できます。逆流量の手法間差が15 mL または10%を超えたら解析を見直すという基準も、日常の判断に直接使えます。
Magnetic Resonance in Medical Sciences
2022
解析実務に直答
技術動向
4D Flow MRI の血行力学パラメータ — 数式の定義と、分解能に効くもの効かないもの
Hemodynamic Parameters for Cardiovascular System in 4D Flow MRI: Mathematical Definition and Clinical Applications
空間微分を含む指標(渦度、ヘリシティ、エネルギー損失)は分解能に弱く、4D Flow では EL が最大で約80%過小評価されます。TKE は空間微分を使わないため微分量より有利ですが、時空間の平均化や層流の速度勾配がボクセル内分散に混入するため、分解能の影響を免れるわけではありません。指標の選択は装置の分解能から逆算できます。
指標選択の相談に対して、数式の構造から答えを出せる総説です。判断の軸は単純で、その指標が空間微分を含むかどうかです。含むもの(渦度・ヘリシティ・EL・WSS)は分解能とノイズに直接影響され、含まないもの(TKE)は影響されにくいです。EL については VENC を 1.5〜2.0 m/s に固定する具体的な推奨も示されています。当社の解析メニューの多くがこの表に載っており、どの指標をどの条件で提案すべきかの根拠になります。当社の共同研究者による論文で、宮崎も著者に加わっています。