腹部大動脈拡張部では低 WSS・高 OSI になる — 4D Flow による実測値
Abnormal Flow Dynamics Result in Low Wall Shear Stress and High Oscillatory Shear Index in Abdominal Aortic Dilatation: Initial in vivo Assessment with 4D-flow MRI
腹部大動脈が拡張した部位の WSS と OSI は、非拡張部と比べて実際にどれだけ違うのか。
収縮中期で WSS は拡張部 0.20 Pa 対 非拡張部 0.68 Pa(p<0.0001)、OSI は 0.093 対 0.041(p=0.013)。WSS は3分の1以下に下がり OSI は2倍以上に上がる。径比との相関は WSS 振幅のほうが強い(r=−0.694)。
当社の視点
腹部大動脈で WSS と OSI の実測値が対で示された数少ない報告です。値の桁を押さえておくと、自施設の解析結果が妥当な範囲にあるかの一次判定に使えます。同一被験者内で拡張部と上流の非拡張部を比べているため、被験者間のばらつきが入りません。ただし2 mm のパーティション厚では WSS が過小評価されうると著者自身が述べており、絶対値をそのまま他施設と比べることはできません。血液粘度に 0.00384 Pa·s を仮定している点も、比較の前に確認すべき条件です。
扱う範囲
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01
対象と撮像
腎動脈下の大動脈拡張がある18名(年齢中央値67.5歳、男性16名)。径の中央値は35 mm。1.5T で造影 3D MRA、心電図同期 2D 位相コントラスト(検証用)、腹部大動脈全体を覆う 4D Flow(12位相)を順に取得した。
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02
収縮中期の値
WSS は拡張部 0.20±0.016 Pa に対し上流の非拡張部 0.68±0.071 Pa(p<0.0001)。OSI は 0.093±0.010 対 0.041±0.0089(p=0.013)。拡張部で WSS が下がり OSI が上がる。
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03
拡張末期の値
WSS は拡張部 0.10±0.008 Pa 対 非拡張部 0.18±0.018 Pa(p=0.0003)。収縮中期より両群とも低いが、差の向きは同じ。
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04
径との相関
最大 WSS と径比の相関は r=−0.542(p=0.0203)。WSS の振幅(収縮期と拡張期の差)のほうが相関が強く r=−0.694(p=0.0014)。単一時相の値より振幅のほうが拡張とよく対応する。
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05
算出条件
血液粘度は 0.00384 Pa·s を仮定。WSS は粘度と壁近傍のずり速度の積として3次元的に求めた。OSI は WSS ベクトルの時間積分から算出。壁の位置は造影 MRA で決めた。
拡張部 対 非拡張部
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| WSS(収縮中期) | 0.20 ± 0.016 対 0.68 ± 0.071 Pa | p < 0.0001 |
| OSI(収縮中期) | 0.093 ± 0.010 対 0.041 ± 0.0089 | p = 0.013 |
| WSS(拡張末期) | 0.10 ± 0.008 対 0.18 ± 0.018 Pa | p = 0.0003 |
| 最大 WSS と径比 | r = −0.542 | p = 0.0203 |
| WSS 振幅と径比 | r = −0.694 | p = 0.0014。単一時相より相関が強い |
| 対象 | 18名 / 径中央値 35 mm | 年齢中央値 67.5 歳 |
| 仮定した血液粘度 | 0.00384 Pa·s | 比較の前に揃えるべき条件 |
いずれもこの論文が報告した値です。
実務チェック
- 単一時相の WSS より WSS 振幅を見る。径比との相関はこちらのほうが強い。
- 仮定した血液粘度を報告に書く。ここでは 0.00384 Pa·s。
- 同一被験者内で拡張部と非拡張部を対にして比べる。被験者間のばらつきが入らない。
- パーティション厚を確認する。2 mm では WSS が過小評価されうる。
この研究の限界
- 対象は18名と少数です。
- 12位相(当時の条件で1位相あたり約83 ms)と時間分解能が限られています。
- パーティション厚 2 mm の空間分解能では WSS が過小評価されうるとしています。
- 壁の位置を造影 MRA の平均信号から決めており、壁位置の定義が値に影響します。
書誌情報
| 原題 | Abnormal Flow Dynamics Result in Low Wall Shear Stress and High Oscillatory Shear Index in Abdominal Aortic Dilatation: Initial in vivo Assessment with 4D-flow MRI |
|---|---|
| 著者 | Takehara Y, Isoda H, Takahashi M, Unno N, Shiiya N, Ushio T, Goshima S, Naganawa S, Alley M, Wakayama T, Nozaki A |
| 掲載誌 | Magnetic Resonance in Medical Sciences(2020) |
| DOI | 10.2463/mrms.mp.2019-0188 |
| PMID | 32655086 |