原著 Magnetic Resonance in Medical Sciences 2020 解析実務に直答 原文精読済み

腹部大動脈拡張部では低 WSS・高 OSI になる — 4D Flow による実測値

Abnormal Flow Dynamics Result in Low Wall Shear Stress and High Oscillatory Shear Index in Abdominal Aortic Dilatation: Initial in vivo Assessment with 4D-flow MRI

Takehara Y, Isoda H, Takahashi M, Unno N, Shiiya N, Ushio T, Goshima S, Naganawa S, Alley M, Wakayama T, Nozaki A

問い

腹部大動脈が拡張した部位の WSS と OSI は、非拡張部と比べて実際にどれだけ違うのか。

答え

収縮中期で WSS は拡張部 0.20 Pa 対 非拡張部 0.68 Pa(p<0.0001)、OSI は 0.093 対 0.041(p=0.013)。WSS は3分の1以下に下がり OSI は2倍以上に上がる。径比との相関は WSS 振幅のほうが強い(r=−0.694)。

当社の視点

腹部大動脈で WSS と OSI の実測値が対で示された数少ない報告です。値の桁を押さえておくと、自施設の解析結果が妥当な範囲にあるかの一次判定に使えます。同一被験者内で拡張部と上流の非拡張部を比べているため、被験者間のばらつきが入りません。ただし2 mm のパーティション厚では WSS が過小評価されうると著者自身が述べており、絶対値をそのまま他施設と比べることはできません。血液粘度に 0.00384 Pa·s を仮定している点も、比較の前に確認すべき条件です。

扱う範囲

  • 01

    対象と撮像

    腎動脈下の大動脈拡張がある18名(年齢中央値67.5歳、男性16名)。径の中央値は35 mm。1.5T で造影 3D MRA、心電図同期 2D 位相コントラスト(検証用)、腹部大動脈全体を覆う 4D Flow(12位相)を順に取得した。

  • 02

    収縮中期の値

    WSS は拡張部 0.20±0.016 Pa に対し上流の非拡張部 0.68±0.071 Pa(p<0.0001)。OSI は 0.093±0.010 対 0.041±0.0089(p=0.013)。拡張部で WSS が下がり OSI が上がる。

  • 03

    拡張末期の値

    WSS は拡張部 0.10±0.008 Pa 対 非拡張部 0.18±0.018 Pa(p=0.0003)。収縮中期より両群とも低いが、差の向きは同じ。

  • 04

    径との相関

    最大 WSS と径比の相関は r=−0.542(p=0.0203)。WSS の振幅(収縮期と拡張期の差)のほうが相関が強く r=−0.694(p=0.0014)。単一時相の値より振幅のほうが拡張とよく対応する。

  • 05

    算出条件

    血液粘度は 0.00384 Pa·s を仮定。WSS は粘度と壁近傍のずり速度の積として3次元的に求めた。OSI は WSS ベクトルの時間積分から算出。壁の位置は造影 MRA で決めた。

拡張部 対 非拡張部

項目補足
WSS(収縮中期) 0.20 ± 0.016 対 0.68 ± 0.071 Pa p < 0.0001
OSI(収縮中期) 0.093 ± 0.010 対 0.041 ± 0.0089 p = 0.013
WSS(拡張末期) 0.10 ± 0.008 対 0.18 ± 0.018 Pa p = 0.0003
最大 WSS と径比 r = −0.542 p = 0.0203
WSS 振幅と径比 r = −0.694 p = 0.0014。単一時相より相関が強い
対象 18名 / 径中央値 35 mm 年齢中央値 67.5 歳
仮定した血液粘度 0.00384 Pa·s 比較の前に揃えるべき条件

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • 単一時相の WSS より WSS 振幅を見る。径比との相関はこちらのほうが強い。
  • 仮定した血液粘度を報告に書く。ここでは 0.00384 Pa·s。
  • 同一被験者内で拡張部と非拡張部を対にして比べる。被験者間のばらつきが入らない。
  • パーティション厚を確認する。2 mm では WSS が過小評価されうる。

この研究の限界

  • 対象は18名と少数です。
  • 12位相(当時の条件で1位相あたり約83 ms)と時間分解能が限られています。
  • パーティション厚 2 mm の空間分解能では WSS が過小評価されうるとしています。
  • 壁の位置を造影 MRA の平均信号から決めており、壁位置の定義が値に影響します。

書誌情報

原題Abnormal Flow Dynamics Result in Low Wall Shear Stress and High Oscillatory Shear Index in Abdominal Aortic Dilatation: Initial in vivo Assessment with 4D-flow MRI
著者Takehara Y, Isoda H, Takahashi M, Unno N, Shiiya N, Ushio T, Goshima S, Naganawa S, Alley M, Wakayama T, Nozaki A
掲載誌Magnetic Resonance in Medical Sciences(2020)
DOI10.2463/mrms.mp.2019-0188
PMID32655086

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