低ずり・振動ずりは動脈硬化の好発部位を説明するか — 27編の系統的レビュー
Does low and oscillatory wall shear stress correlate spatially with early atherosclerosis? A systematic review
低ずり・振動ずりが動脈硬化の好発部位を説明するという通説は、どこまで確かか。
406編から選んだ27編を精査した結果、著者は「通説ほど強固ではない」と結論している。支持する報告は多数派だが、点対点で比較した5編は有意な関係を見いだしていない。周方向平均などのデータ処理の仕方、閾値の取り方、病変の評価法が結論を左右している。
当社の視点
WSS・OSI を使う根拠そのものを検証したレビューです。実務上効くのは、データの縮約方法で結論が変わるという指摘です。点対点の比較では相関が出ず、軸方向・周方向に平均すると有意になる。つまり「低ずりと病変が一致する」という主張は、どう平均したかとセットでなければ意味を持ちません。自社の解析でも、面や領域をどう区切って平均したかを明記しないと同じ問題を抱えます。WSS を否定する論文ではなく、報告の書き方を規定する論文として読むのが妥当です。
扱う範囲
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01
選択の過程
406編から27編を選定。15施設に由来する。条件は、解剖学的に現実的な形状での CFD 解析であること、確立された指標で病変部位を同定していること、同一領域でずり関連量と病変分布を詳細に比較していること。
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02
支持と不支持の内訳
低 WSS(定常流)は9編が支持・2編が不支持。低 TAWSS は3編対1編。TAWSS と OSI の組み合わせは4編対2編。TAWSS か OSI か RRT のいずれかでは4編対0編。多数派は支持側にある。
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03
点対点比較では出ない
5編は点対点の比較で低ずりと病変の間に有意な関係を見いだしていない。軸方向・周方向に平均すると有意になる。データの縮約方法が結論を決めている。
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04
結論を左右する4つの違い
分岐部を除外したり、ずり値や病変値で事前選別して変動幅を狭めていること。閾値(1.0〜1.5 Pa)の当て方が研究ごとに違うこと。脂質染色・石灰化スコア・内膜厚は違う病期を見ていること。病変のある形状で流れを計算したか否か。
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05
著者の結論
「低ずり・振動ずり説の証拠は、一般に想定されているほど強固ではない」。理論が研究ごとに異なる解釈と検証を受けており、その多様さは一つの精密な仮説への支持を強めるのではなく弱めていると述べている。
27編の内訳
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 選定 | 406編 → 27編 | 15施設に由来 |
| 低 WSS(定常流) | 支持 9 / 不支持 2 | — |
| 低 TAWSS | 支持 3 / 不支持 1 | — |
| TAWSS と OSI の併用 | 支持 4 / 不支持 2 | — |
| TAWSS か OSI か RRT | 支持 4 / 不支持 0 | — |
| 点対点比較で有意差なし | 5編 | 平均化すると有意になる |
| 使われた WSS 閾値 | 1.0〜1.5 Pa | 研究ごとに当て方が異なる |
いずれもこの論文が報告した集計です。
実務チェック
- WSS と病変の一致を論じるとき、どう平均したかを必ず書く。点対点か、軸方向平均か、周方向平均かで結論が変わる。
- 閾値を使うなら数値と根拠を明記する。1.0〜1.5 Pa の範囲で研究ごとに違う。
- 分岐部の除外や事前選別をしたなら書く。変動幅を狭めると相関が出やすくなる。
- 比較相手の病変評価法を確認する。脂質染色・石灰化・内膜厚は同じ病期を見ていない。
この解析の限界
- ヒトで病変の初発を追った縦断研究は存在せず、対象はすべて進行例です。
- 被験者固有の研究は代償性リモデリングの仮定に依存しています。
- 血管種をまたいだ病変分布の全体像は十分に検討されていません。
- 血行力学の多群比較は症例数が不足しているとしています。
書誌情報
| 原題 | Does low and oscillatory wall shear stress correlate spatially with early atherosclerosis? A systematic review |
|---|---|
| 著者 | Peiffer V, Sherwin SJ, Weinberg PD |
| 掲載誌 | Cardiovascular Research(2013) |
| DOI | 10.1093/cvr/cvt044 |
| PMID | 23459102 |