冠動脈の WSS はプラークの進展と組成の変化に関わるか — 低 WSS と高 WSS の6か月の追跡
Coronary artery wall shear stress is associated with progression and transformation of atherosclerotic plaque and arterial remodeling in patients with coronary artery disease
冠動脈で低い WSS と高い WSS は、それぞれプラークのどんな変化と結びつくのか。高い WSS は保護的なのか。
20例の左前下行枝で、WSS を低(1.0 Pa 未満)・中(1.0〜2.5 Pa)・高(2.5 Pa 超)に分けて6か月追跡すると、低 WSS の区間はプラーク面積と壊死性コアが増え、血管が内向きに縮む傾向でした。高 WSS の区間はプラーク面積は増えず、壊死性コアと高密度石灰が増え、線維・線維脂肪成分が減り、血管が外向きに過剰に広がる傾向でした。破綻しやすい組成への変化を示唆する結果です。
当社の視点
低い WSS は悪く高い WSS は安全、という単純な図式を崩した研究です。高い WSS の区間ではプラークの量は増えないかわりに組成が不安定な方向に変わり、のちの高 WSS と心筋梗塞の研究につながりました。計算条件では、入口と出口にドップラーワイヤーで実測した流速を与え、側枝も再構成に含めて拍動流で解いています。一方、低い WSS の区間で血管が縮む傾向は、同じ IVUS と CFD の方法で外向きの拡大を報告した Stone 2003 と逆で、リモデリングの向きは研究間で一致していません。プラークの組成は高周波 IVUS(VH-IVUS)の推定で、組織学との対応には異論があります。
扱う範囲
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01
対象
非閉塞性病変で生理学的評価を受けた安定患者20例の左前下行枝を、ベースラインと6か月後に評価しました。全員にアトルバスタチン 80 mg を投与し、LDL は 118.5 から 70.5 mg/dL に下がりました。
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02
計算条件
2方向の造影でカテーテルの軌跡を求めて IVUS の断面を並べ、側枝も加えて3次元に再構成しました。入口には実測ピーク流速の80%の一様流を拍動で与え、ニュートン流体として解きました。各 IVUS 断面で時間平均 WSS を周方向に平均した値を使っています。
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03
WSS の区分
低 WSS は 1.0 Pa 未満(10 dyn/cm² 未満)、中は 1.0〜2.5 Pa、高は 2.5 Pa 超としました。2249断面のうち低205、中1034、高1010断面で、平均値はそれぞれ 0.57、1.83、4.39 Pa でした。
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04
高 WSS の区間の性質
高 WSS の区間はベースラインのプラーク量が45.5%と大きく、流れを加速させて WSS を上げる一方、血管全体の FFR は中央値0.90で流量を制限していませんでした。流量を制限しない大きなプラークが不安定化しやすいという概念と整合するとしています。
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05
リモデリング
収縮性リモデリングは低 WSS 区間で73%、高 WSS 区間で30%、過剰な外向きリモデリングは高 WSS 区間で42%、低 WSS 区間で15%でしたが、いずれも統計的に有意ではありませんでした。
WSS の区分ごとの6か月の変化
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| WSS の区分 | 低 < 1.0 Pa・中 1.0〜2.5 Pa・高 > 2.5 Pa | 時間平均・周方向平均 |
| ベースラインのプラーク量 | 低28.8%・中34.3%・高45.5% | P<0.0001 |
| プラーク量の変化 | 低 +3.39%・中 −0.13%・高 −1.34% | 6か月 |
| 外弾性板面積の変化 | 低 −0.78 mm²・高 +0.14 mm² | 低 WSS で縮小、高 WSS で拡大 |
| 収縮性リモデリング | 低73%・高30% | P=0.06 |
| 対象血管の FFR | 中央値0.90 | 0.75 未満なし |
いずれもこの論文が報告した値です。
実務チェック
- WSS とプラークの関係を説明するときは、高い WSS がプラークの組成を不安定な方向に変えうることを併記します。
- 低 WSS の部位のリモデリングの向きは研究によって逆の報告がある(Stone 2003 は外向き、Samady 2011 は内向き)ことを踏まえて引用します。
- WSS の区分の閾値と、時間平均・空間平均の取り方を研究ごとに確認してから比較します。
この研究が扱わない範囲
- 20例の小規模研究で、因果関係は示していません。
- プラークの組成は VH-IVUS の推定で、ブタの研究では壊死性コアの大きさと組織学の相関が見られなかったと著者自身が書いています。
- 臨床事象との関係は扱っていません。
書誌情報
| 原題 | Coronary artery wall shear stress is associated with progression and transformation of atherosclerotic plaque and arterial remodeling in patients with coronary artery disease |
|---|---|
| 著者 | Samady H, Eshtehardi P, McDaniel MC, Suo J, Dhawan SS, Maynard C, Timmins LH, Quyyumi AA, Giddens DP. |
| 掲載誌 | Circulation(2011) |
| DOI | 10.1161/CIRCULATIONAHA.111.021824 |
| PMID | 21788584 |