ステント留置で冠動脈の壁面せん断応力はどう変わるか — スロット管ステントの3次元 CFD
Three-dimensional computational fluid dynamics modeling of alterations in coronary wall shear stress produced by stent implantation
冠動脈にステントを留置すると、ストラットの形と配置によって血管壁の WSS の分布はどう変わるのか。
イヌの左前下行枝の実測流速と内径から、スロット管ステント(16 mm、ストラット突出 0.1 mm)を入れた3次元模型を作って定常流で解くと、ストラットの前後に低 WSS の淀みができ、ステントの出口側で低 WSS の範囲が広がりました。アデノシンで血流を増やした条件では、最小 WSS がステントのない血管より出口で77%、ステント内で66〜82%低くなりました。
当社の視点
ステントの再狭窄率がステントの種類で違う理由を、ストラットの形が作る局所の流れから説明しようとした初期の3次元計算です。ストラットの直上で WSS が高く、前後で低くなり、軸方向のストラットが近く周方向の間隔が広い部位に低 WSS が集まりました。血流が増えるほど出口の低 WSS の範囲が延びる結果も示しています。のちの Gijsen らの推奨が、ステント内ではストラットの高さを約10要素で分割する細かい格子を求める背景にある研究です。直線の剛体管・定常流・ニュートン流体と簡略化が大きく、資金の一部はステントの製造企業から出ています。
扱う範囲
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01
模型の作り方
イヌの左前下行枝で、ステント留置の前後とアデノシン投与の有無で測った流量と外径から内径を求め、Palmaz-Schatz 型を基にした16 mm のステントを入れた直管を作りました。ストラットは幅約 0.35 mm、血管壁に完全に接し、0.1 mm 内腔に突出させています。
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02
計算条件
各条件の最小と最大の流速を定常の放物線分布で入口に与え、出口圧0、ニュートン流体(密度 1060 kg/m³、粘度 3.7 cP)としました。格子の密度を変えた差が6%未満で収束としています。
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03
流れの変化
斜めのストラットが隣接する血液層を収束・発散させる流路として働き、ステント内で面外の流れが生じました。断面積が広がる各ひし形の中央付近で低 WSS になりました。
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04
WSS の分布
ストラットの直上で最も高く、後続のストラットごとに少しずつ下がりました。ストラットが流れに直交する移行部と、ステントの出口で低 WSS が目立ちました。安静時の最大の空間勾配はステント近位端付近で 22 dyn/cm²/mm でした。
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05
設計への含意
軸方向のストラットの数を減らし、流れの向きにそろえた設計が流れの乱れを抑える可能性があるとしています。
ステント留置による WSS の変化
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| ステントなしの WSS(安静時) | 0.38〜1.8 Pa | 3.8〜18 dyn/cm²(最小〜最大流速) |
| ステントなしの WSS(アデノシン) | 0.95〜6.5 Pa | 9.5〜65 dyn/cm² |
| 出口の最小 WSS の低下(アデノシン) | 77% | 最小・最大流速とも |
| ステント内の最小 WSS の低下(アデノシン) | 66%・82% | 最小流速・最大流速 |
| ストラットの突出 | 0.1 mm | 幅約 0.35 mm |
いずれもこの論文のイヌの実測値に基づく計算値です。ヒト冠動脈の値ではありません。
実務チェック
- ステント留置部の WSS を計算するときは、ストラットを形状に含めたか、平滑な内腔で近似したかを明記します。
- ストラット周囲の流れを解く場合は、ストラットの高さ方向に十分な格子数を置いたかを記録します。
- 安静時と最大充血時で低 WSS の範囲が変わるため、どちらの流量条件で計算したかを示します。
この研究が扱わない範囲
- 直線の剛体管・定常流・ニュートン流体で、冠動脈の湾曲と拍動を含みません。
- 留置直後の形状で、内皮化と新生内膜による長期の形の変化は扱っていません。
- 計算結果とヒトの再狭窄の対応は検証していません。
- 資金の一部はステントの製造企業から出ており、著者の1名は同社の所属です。
書誌情報
| 原題 | Three-dimensional computational fluid dynamics modeling of alterations in coronary wall shear stress produced by stent implantation |
|---|---|
| 著者 | LaDisa JF, Guler I, Olson LE, Hettrick DA, Kersten JR, Warltier DC, Pagel PS. |
| 掲載誌 | Annals of Biomedical Engineering(2003) |
| DOI | 10.1114/1.1588654 |
| PMID | 12918912 |