原著 Journal of the American College of Cardiology 2018 解析実務に直答 技術動向 原文精読済み

狭窄の無い狭心症で冠動脈機能を測ると治療は良くなるか — CorMicA 試験

Stratified Medical Therapy Using Invasive Coronary Function Testing in Angina: The CorMicA Trial

Ford TJ, Stanley B, Good R, Rocchiccioli P, McEntegart M, Watkins S, Eteiba H, Shaukat A, Lindsay M, Robertson K, Hood S, McGeoch R, McDade R, Yii E, Sidik N, McCartney P, Corcoran D, Collison D, Rush C, McConnachie A, Touyz RM, Oldroyd KG, Berry C.

問い

狭心症で造影しても有意な狭窄が無い患者に、冠血流予備能・微小循環抵抗・攣縮誘発を測ると、診断と症状はどう変わるのか。

答え

造影で閉塞性病変の無い151例を無作為に割り付け、冠動脈機能検査の結果を主治医に伝えた群では、6か月の狭心症の総合スコアが11.7点改善しました。検査では微小血管狭心症51.7%、攣縮性狭心症16.6%、両者の合併20.5%が見つかり、異常が無かったのは11.3%でした。結果を伝えない群では35.5%が見逃されていました。

当社の視点

造影の空間分解能は約 0.3 mm で、心筋血流を主に決める直径約 0.1 mm の抵抗細動脈は写りません。狭窄の無い狭心症の大半に、心外膜冠動脈の形では見えない血流の異常(微小循環の拡張不全や攣縮)があることを示した試験です。FFR は心外膜の狭窄を評価する指標で、この患者群の FFR の中央値は0.88と正常でした。冠動脈の血流解析が対象にするのは主に心外膜冠動脈であり、そこが正常でも虚血は起こりうるという線引きを、顧客に説明するときの根拠になります。

扱う範囲

  • 01

    対象と割り付け

    スコットランド西部の2病院で、狭心症の精査のため待機的に造影を受ける患者を登録しました。閉塞性病変(径狭窄50%以上か FFR 0.80 以下)が無ければその場で無作為化し、全員に機能検査を行い、介入群だけ結果を主治医に伝えました。

  • 02

    冠動脈機能検査

    主に左前下行枝で、アデノシン静注下に冠血流予備能(CFR、2.0 未満で異常)、微小循環抵抗指数(IMR、25以上で異常)、FFR を圧ワイヤーで測り、続いてアセチルコリンを段階的に注入して攣縮を誘発しました。

  • 03

    病型の定義

    攣縮性狭心症は90%以上の心外膜血管の収縮・胸痛の再現・虚血性心電図変化の3条件で、微小血管狭心症は COVADIS 基準(IMR か CFR の異常、または微小血管攣縮)で判定しました。

  • 04

    治療の変化

    介入群では主治医の約半数が診断を変え、病型に合わせた抗狭心症治療が86.5%(対照30.3%)に行われました。6か月時点のカルシウム拮抗薬の使用は50.7% と21.1%でした。

  • 05

    安全性

    機能検査は96%で完了し、重篤な有害事象はありませんでした。アセチルコリン投与に伴う一過性の心房細動が約20人に1人で起きました。

CorMicA の主な結果

項目値補足
登録と無作為化 391例中151例 閉塞性病変は53.7%
微小血管狭心症(単独) 51.7% 無作為化した全員の機能検査結果
攣縮性狭心症(単独) 16.6% 合併20.5%、異常なし11.3%
狭心症総合スコアの改善 11.7点 Seattle 狭心症質問票、6か月、P=0.001
見逃された診断 介入群2.7%・対照群35.5% 相対リスク0.08
FFR の中央値 0.88 四分位範囲0.84〜0.92
6か月の心事故 両群とも2.6% —

いずれもこの論文が報告した値です。

実務チェック

  • 心外膜冠動脈の血流解析で異常が無い場合も、微小循環障害や攣縮による虚血は否定できないことを報告に書き添えます。
  • FFR は心外膜の狭窄に特異的な指標で、微小循環の機能は CFR や IMR で別に評価することを区別して説明します。
  • 造影の空間分解能(約 0.3 mm)で写らない血管の血流は、画像からの形状再構成でも扱えないことを前提に置きます。

この試験が扱わない範囲

  • 症例数の小さい試験で、症状改善が治療の最適化によるのか、診断が確定したことによるのかは区別できないと著者は書いています。
  • 主治医は割り付けを知っていました(検査結果は対照群に伏せています)。
  • 追跡は6か月で、心事故への影響を論じる検出力はありません。
  • アセチルコリンに対する冠血流の反応は測っていません。

書誌情報

原題Stratified Medical Therapy Using Invasive Coronary Function Testing in Angina: The CorMicA Trial
著者Ford TJ, Stanley B, Good R, Rocchiccioli P, McEntegart M, Watkins S, Eteiba H, Shaukat A, Lindsay M, Robertson K, Hood S, McGeoch R, McDade R, Yii E, Sidik N, McCartney P, Corcoran D, Collison D, Rush C, McConnachie A, Touyz RM, Oldroyd KG, Berry C.
掲載誌Journal of the American College of Cardiology(2018)
DOI10.1016/j.jacc.2018.09.006
PMID30266608

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