流量・逆流分画・ピーク流速・Qp/Qs は臨床応用。WSS・脈波伝播速度・TKE・相対圧は「臨床的妥当性が未確立」。2015年に引かれたこの線は2026年の推奨文書にも引き継がれています。
4D Flow MRI からは多くの指標が計算できます。しかし計算できることは、使えることを意味しません。
二つの表に分けた文書
2015年の初版の合意声明は、4D Flow から得られる指標を二つの表に分けました。
臨床応用として推奨:流量、逆流分画、ピーク流速、Qp/Qs。
研究段階(臨床的妥当性が未確立):壁面せん断応力、脈波伝播速度、乱流運動エネルギー、相対圧、流入コンパートメント。
理由も挙げられています。空間分解能への依存、実際の値との関係が不明、乱流を考慮していない。第1章と第3章で見てきたことが、そのまま並んでいます。
これが臨床応用と研究段階の線引きの初出です。当社が扱う指標の多くは、後者の側にあります。
11年後も同じ線が引かれている
この線引きは引き継がれています。先天性心疾患の 4D Flow 後処理推奨は、14施設が「理想の解析ソフト」に求める要件を列挙した文書ですが、壁面せん断応力・渦度・運動エネルギー・エネルギー損失・圧力マッピング・ヘリシティは「現時点でルーチンではない」として対象外に置いています。
同時に、これらが研究から臨床へ移る可能性を認め、解析ソフトは新しいモジュールを追加できる設計であるべきだとも述べています。門は閉じていないが、いまは外側にある、という位置づけです。
ボトルネックは撮像ではない
この推奨文書には、もう一つ重要な現場認識があります。先天性心疾患の 4D Flow を日常診療に乗せるときのボトルネックは、撮像ではなく後処理です。
撮れるようになっても、解析の手間と再現性が障壁として残っている。だから文書は施設の手順ではなくソフトの要件を定めています。ソフト選定やベンダーとの交渉に、そのまま使えるチェックリストです。
撮像条件は新しい版を使う
実務上の注意を一つ。2015年版の撮像パラメータ(空間分解能 2.5 mm³ 未満、時間分解能 40 ms 未満など)は、2023年版で更新されています。初版の数値を現行値として引かないこと。
初版を読む価値は、撮像条件ではなく、この線引きの初出であることと、線引きの理由が書かれていることにあります。その理由は、いま顧客と条件を詰めるときの論点そのものです。
次の記事へ
「空間分解能への依存」が理由として挙がっていました。では、どの指標がどれだけ分解能に依存するのでしょうか。次の記事で、その判断基準が一つの原理にまとまることを見ます。