第4章 / 全6章
流れを測る三つの道具
4D Flow MRI、心エコーの Vector Flow Mapping、数値流体解析。得意な範囲が違うため、指標の選択は装置の分解能から逆算できます。国際合意が引いた線引きもここで確認します。
この章が答える問い
その速度場は、どう測られているのか。道具ごとに何が測れて何が測れないのか。
ここまでの章では、壁面せん断応力やエネルギー損失といった量を、あるものとして扱ってきました。この章ではその手前に戻ります。それらの量は、どこから来ているのか。
答えは共通しています。まず血流の速度場を得て、そこから微分や積分で派生量を作る。したがって速度場の質が、派生量の質の上限を決めます。この章では、速度場を得る三つの道具の性質を整理し、どの指標がどの道具に向くかを逆算できるようにします。
この章のセクション(5 記事)
- 4-1 4D Flow MRI — 撮ってから決める 心周期にわたる3次元の速度場を一度に取得します。成人の血管で 2 mm³、定量用の時間分解能 30 ms。導入時は10例で 2D と比較し流量差5%以内が目安です。 文献 1 本
- 4-2 臨床応用と研究段階の線引き 流量・逆流分画・ピーク流速・Qp/Qs は臨床応用。WSS・脈波伝播速度・TKE・相対圧は「臨床的妥当性が未確立」。2015年に引かれたこの線は2026年の推奨文書にも引き継がれています。 文献 2 本
- 4-3 空間微分を含むか、それだけが基準 渦度・ヘリシティ・エネルギー損失・WSS は分解能に弱く、4D Flow ではエネルギー損失が最大80%過小評価されます。TKE は空間微分を使わないため分解能に強い。 動く図 1 点 / 文献 1 本
- 4-4 心エコーの側 — 高い時間分解能と、2次元の代償 VFM はステレオ PIV との比較で相関 R=0.87、平均誤差 4.5%。ただし面外方向の流速が全流速の約30%、拡張期ピークでは44%を占めます。 文献 1 本
- 4-5 計測を最小にする道、閾値から逃れる道 渦形成時間は僧帽弁輪径・流入速度・E波持続時間だけから求まり、健常 3.5〜5.5、拡張型心筋症 1.5〜2.5。渦をトポロジーで捉える試みも進んでいます。 文献 2 本
最終更新 2026-09-07