第4章 / 全8章

速度場を得る三つの計測・解析手法

速度場を得る道具は 4D Flow MRI、心エコーの Vector Flow Mapping、数値流体解析の三つです。得意な範囲が違うため、指標の選択は装置の分解能から逆算できます。国際合意が引いた線引きもここで確認します。

この章が答える問い

その速度場は、どう測られているのか。道具ごとに何が測れて何が測れないのか。

ここまでの章では、壁面せん断応力やエネルギー損失といった量を、あるものとして扱ってきました。この章ではその手前に戻ります。それらの量は、どこから来ているのか。

答えは共通しています。まず血流の速度場を得て、そこから微分や積分で派生量を作ります。したがって速度場の質が、派生量の質の上限を決めます。この章では、4-14D Flow MRI、4-5心エコーの VFM、4-6数値流体解析という三つの道具の性質を整理し、4-4どの指標がどの道具に向くかを逆算できるようにします。国際合意声明1が引いた線引きも、この章で確認します。

引用文献(1 本)

  1. 1

    Bissell MM, Raimondi F, Ait Ali L ほか. 4D Flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement: 2023 update. Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance. 2023.↩

    4D Flow、使える状態の条件 成人 2 mm³・30 ms、導入時は10例で流量差5%以内

この章のセクション(7 記事)

  1. 4-1 4D Flow MRI の撮像条件と品質保証 心周期にわたる3次元の速度場を一度に取得します。成人の血管で 2 mm³、定量用の時間分解能は 30 ms です。導入時は10例で 2D と比較し流量差5%以内が目安です。 動く図 1 点 / 文献 3 本
  2. 4-2 流量の収支による内部整合性の検査 血液は非圧縮なので、分岐に流入した量と流出した量は一致します。不一致は測定・後処理・対象範囲を見直す信号になりますが、誤差は相殺され得るため、収支残差は各測定値の誤差そのものではありません。 動く図 1 点 / 文献 5 本
  3. 4-3 臨床指標と研究用指標の区分 流量・逆流分画・ピーク流速・Qp/Qs は臨床応用として推奨されています。WSS・脈波伝播速度・TKE・相対圧は2015年に「臨床的妥当性が未確立」とされました。2026年の後処理推奨も、これらを日常のルーチンではないとして対象外に置いています。 文献 3 本
  4. 4-4 空間微分の有無による指標の分解能依存性 渦度・ヘリシティ・エネルギー損失・WSS は分解能に弱く、4D Flow ではエネルギー損失が最大80%過小評価されます。TKE は空間微分を使わないため相対的に有利ですが、免れているわけではありません。 動く図 1 点 / 文献 4 本
  5. 4-5 Vector Flow Mapping の精度と2次元流の仮定 VFM はステレオ PIV との比較で相関 R=0.87、平均誤差 4.5% でした。ただし面外方向の流速が全流速の約30%、拡張期ピークでは44%を占めます。 文献 2 本
  6. 4-6 数値流体解析(CFD)の分解能と境界条件 CFD は分解能を自分で決められる唯一の道具です。ただし細かく解けることと正しいことは別で、代わりに手間を払います。前処理は手作業で、1心周期の計算には日単位の時間がかかります。 動く図 1 点 / 文献 6 本
  7. 4-7 無次元指標とトポロジカルな渦抽出 渦形成時間は僧帽弁輪径・流入速度・E波持続時間だけから求まり、健常 3.5〜5.5、拡張型心筋症 1.5〜2.5 になります。渦をトポロジーで捉える試みも進んでいます。 文献 3 本

最終更新 2026-09-07